IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

CASBEE-街区

CASBEE-街区とは

CASBEEはその開発当初より、単体建築物のみならず建築群としての環境性能を評価する手法を開発することの重要性が認識されていましたが、2004年12月に都市再生本部決定の「都市再生事業を通じた地球温暖化対策・ヒートアイランド対策の展開」において、「都市再生事業の環境格付」を図ることが謳われ、面的・都市計画的なプロジェクトの評価に適応し得るツールの開発が要請されるところとなりました。そのような動きを受け、2006年7月に、地区スケールに適用可能なCASBEEとして「CASBEE-まちづくり」を公表しました。

その後、東日本大震災を経て、地域の防災性能やエネルギー環境安定化への要請が高まり、更に国においても、「都市の低炭素化の促進に関する法律」(通称エコまち法)が2012年に制定されるなど、地域の環境性能評価に対する周辺状況は大きく様変わりしてきました。このような状況に対応するため、CASBEE-まちづくりに抜本的に改訂を加え、新たに作成されたツールが「CASBEE-街区」です。
評価ツールのダウンロードはこちら(日本サステナブル建築協会)


仮想境界の基本的な考え方

CASBEE-街区は評価の方法論や枠組みについても従来のCASBEE-建築の考え方を継承している。即ち、評価されるべき面的整備プロジェクトに仮想境界を設定し、この仮想境界内部の環境品質(QUD)と、仮想境界の外側に対する環境負荷(LUD)という両側面から評価する。


図1 CASBEE-街区の評価対象


評価対象プロジェクトの「対象区域」の考え方

仮想境界の設定に際し、そのベースとなるべき一団の空間の広がり(もしくは境界線)の意味で「対象区域」と表すことにする。CASBEE-建築の場合は、対象区域=当該プロジェクトの建築敷地(敷地境界)とすることが明快である。これに対して街区/地区スケールの場合は複数の建築敷地や非建築敷地も含み得ることから、「統一的な整備意思」を最も端的に反映し、客観的に認識しやすい対象区域設定の原則を、以下のように定める。

  1. CASBEE-街区において、評価すべきプロジェクトの区域設定は、原則として当該プロジェクトの計画・整備に適用されている各種法令・制度・手法等で定められた計画区域・事業区域等とする。
  2. ここで適用が考えられる制度・手法として、市街地再開発事業、土地区画整理事業、都市再生特別地区、各種の地区計画、エコまち法による集約都市開発事業、一団地の総合的設計、連坦建築物設計制度、等がある。
  3. ただし例外として、街区/地区スケールでの総合的環境性能評価の観点から妥当と判断される場合には、上記の区域外の隣接部分を評価対象範囲に取り込むことや、逆に上記の区域の一部を評価対象範囲から除外することも可能である。本項例外を適用する場合、評価者はその設定理由を明示しなければならない。

CASBEE-街区の活用方法

CASBEE-街区の主な活用方法として、例えば下記の4つが挙げられる。

  1. 面開発型プロジェクトにおける環境配慮計画ツールとして活用
  2. 環境ラベリングツールとして活用
  3. 街区/地区スケールでの、省エネ改修などの計画・評価ツールとして活用
    これらは、総じて面開発事業における環境配慮へのインセンティブとなることが期待される。
  4. 都市計画を、サステナブルな街づくりの観点から補強するツールとして活用
    ① 個別には、市街地再開発事業、都市再生特別地区、各種の地区計画、一団地の総合的設計、連担建築物設計制度、エコまち法による集約都市開発事業、等の諸制度の対象プロジェクト個々の総合的環境性能の向上を誘導
    ② 総合的には、①により一定レベルの環境性能が確保された面開発事業を先導的拠点として、都市全体の持続可能性の計画的向上を誘導

評価方法

他の多くのCASBEEツールと同様に、Q(環境品質)とL(環境負荷)をそれぞれ別個に評価・採点する。QUD(街区に関わる環境品質)は、環境、社会、経済のトリプルボトムラインに対応した3分類の大項目(QUD1~QUD3)で構成され、LUD(街区における環境負荷)は、低炭素化の努力程度で表す。対象区域の評価結果は、それらの分野毎の得点をバーチャートやレーダーチャートで多角的に示す。更に全項目を下式のように総合化して、街区に関わる環境効率(BEEUD)に指標化する。

L はまずLR(環境負荷低減性)として評価することも従来のCASBEE と同様である。CASBEE-街区ではLRUDの評価として、対象プロジェクトに起因する温室効果ガス排出量を算定し、そのBAU 値(Business As Usual、特段の施策を施さない場合の趨勢値)と比較した「施策後」の削減率によることとしている。
QUD1 からQUD3 の各大項目はそれぞれ3 項の中項目で構成し、更に各中項目は1~2 項の小項目、その下に適宜細項目を構成する。各細項目ごとに予め設定された基準により5段階で採点する。

分子のQUDは、対象街区/地区の内外で積み重ねてきた広範なトリプルボトムラインの向上努力の累積結果を捉えて評価する。そのため、どちらかといえばストック的な絶対値で表される。対する分母のLUDは対象プロジェクトの整備や運用に起因するCO2年間排出量の削減程度で評価する。そのため、不断の努力で継続的に改善すべき、フロー的な性格を有している。BEEUDの算式にはストック的要素とフロー的要素が併存する形であるが、分子・分母それぞれをスコア化(1~100)することによって、簡潔な総合評価結果表示が可能となっている。

 

 

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