CASBEE-建築(新築) 開発の背景
「CASBEE-建築(新築)」は、従来の「CASBEE-新築」と「CASBEE-新築(簡易版)」を統合する形で2014年に開発されたものであり、両ツールの機能を引き継いでいる。すなわち、CASBEE-新築(簡易版)の特徴である、建築物の環境性能水準や設計目標の設定、地方公共団体への届出書類の作成といった目的と、CASBEE-新築の特徴である、環境設計の実施内容の詳細評価や第三者認証の取得といった目的の両方に使用することが可能である。
評価ツールのダウンロードはこちら(日本サステナブル建築協会)
評価対象建築物
CASBEE-建築(新築) は、戸建住宅を除く全ての用途に適用可能である。用途分類は省エネルギー基準で用いられる8用途(工場含む)、及び集合住宅であり、戸建て住宅は対象外とする。なお、工場についてはQ1室内環境とQ2「1.機能性」の評価では主に居住エリア(事務所等)を評価の対象とし、生産エリアは評価対象外とする。LR1エネルギーの評価では、エネルギー消費性能基準で計算対象外となる工場の生産エリアにおけるエネルギー消費は評価対象外とする。
対象となる用途については、「非住宅系用途」と「住宅系用途」の大きく二つに区分している。特に「住宅系用途」に区分される病院、ホテル、集合住宅は、利用者の住居・宿泊空間(以下<住居・宿泊部分>)を含む建築物である。これら、住宅系用途の建築物の評価は、「住居・宿泊部分」とそれ以外の共用部分(以下<建物全体・共用部分>)とに分けて行う。
適用対象用途(住宅系と非住宅系に大別)
採点基準の考え方
CASBEEは、Q(Quality:建築物の環境品質)とL(Load:建築物の環境負荷)をそれぞれを別個に採点し、最終的にその結果を基にBEE(Built Environment Efficiency:建築物の環境効率)を指標として評価することを特徴としている。その際、LはまずLR(Load Reduction:建築物の環境負荷低減性)として評価される。それは、「建築物の環境品質の向上が高評価となる」ことと同じように、「環境負荷の低減が高評価となる」よりも「環境負荷低減性の増大が高評価となる」方が、一つの評価システムとして理解しやすいからである。
採点基準については、対象建築物の各用途に適切に対応できる基準となるよう検討するとともに、できるだけ基準の統一化を図りシンプルなシステムをめざした。各評価項目の採点基準は、以下の考え方に従って設定されている。
①レベル1~5の5段階評価とし、基準値の得点はレベル3とする。
②原則として、建築基準法等、最低限の必須要件を満たしている場合はレベル1、一般的な水準と判断される場合はレベル3と評価できるような採点基準とする。
③一般的な水準(レベル3)とは、評価時点の一般的な技術・社会水準に相当するレベルをいう。
評価システム概要
(1) 評価項目の採点
Q(Quality:建築物の環境品質)とL(Load:建築物の環境負荷)のそれぞれに含まれる評価項目について、各々設定された採点基準(レベル1~レベル5)に従って採点を行う。レベル1は1点、レベル5は5点として、それぞれの項目の得点が決まる。
住宅系用途に分類される集合住宅、ホテル、病院では、<住居・宿泊部分>を、それ以外の部分(<建物全体・共用部分>)とは分けて両者を評価する。その際、評価項目によっては<住居・宿泊部分>と<建物全体・共用部分>では異なる採点基準が適用される。建物一体としての評価結果を得る際には、項目毎にスコアを各部分の床面積の比率に従って加重平均することで建物全体としての結果を得ることができる。
住宅系と非住宅系の用途建物を含む建物評価システム
(2) 評価結果
採点結果は、「スコアシート」と「結果表示シート」の書式に集約される。
評価項目ごとの採点の結果はまず、「スコアシート」に一覧表示される。これらを各評価項目の重み係数で加重して、Q1~Q3、LR1~LR3までの分野別の総合得点SQ1~SQ3、SLR1~SLR3、並びにQとLRの得点SQ、SLRを算出する。
「結果表示シート」では、Q(建築物の環境品質)とLR(建築物の環境負荷低減性)のそれぞれについて、分野ごとの評価結果がレーダーチャートと棒グラフと数値で表示される。さらにBEE(建築物の環境効率)の結果がグラフと数値で表示され、これらによって、環境配慮に対する対象建物の特徴を多角的かつ総合的に把握することができる。
評価結果シート
BEEは、QとLRの得点SQ、SLRに基づき、以下の式で求められる。
また、グラフ座標上で縦軸のQ値と横軸のL値でプロットされる環境効率の位置により、SランクからCランク5段階の建築物環境効率ランキングが表示される。(詳細は PART III を参照)なお、それぞれのランクは表Ⅰ.2.2に示す評価の表現に対応し、分かり易いように赤星印の数で表現される。
BEEと赤星による建築物環境効率ランキングの表示
BEE値によるランクと評価の対応