審査委員会奨励賞B05Tokyo記念サステナブル建築・住宅賞(事務所ビルの部)
「堺ガスビル」
建築主 | 大阪ガス(株) (株)アーバネックス |
設計者 | (株)日建設計 (株)安井建築設計事務所 |
施工者 | 高砂熱学工業(株) 富士通(株) |
建設地 | 大阪府堺市 |
構造 | SRC・S造 |
階数 | 地上7階地下1階 |
延床面積 | 7,156m2 |
講評
自然換気(外気導入による冷房負荷削減)と天井扇によるパッシブ冷房が目玉になった意欲的な省エネビルである。28℃の冷房ということにこだわり、それを実現すための真剣な努力が窺われる。自然換気や通風などのパッシブ冷房は最近の省エネ・環境ビルに多々導入されている手法であるが、実際は、それらの運用実態や省エネ効果が十分に報告されているわけではなく、本当に有効なのかどうか、疑念がないわけではない。
しかし、このビルにおいては、まず外界の条件に応じてどのようなモードの冷房を行うかが明快に定められており、そのために年間を通じたパッシブ冷房の効果が明瞭に分析されている。このような明快な分析事例は他にあまり類例がなく、この建物で行われている検証は学術研究としても興味深く、高い価値がある。さらに、ガスタービンコジェネのカスケード利用やデシカント空調による除湿についてもしっかりした分析を行っている。
残念ながら、「コスト削減をかなり追求した建物」であるので、窓の断熱や日射遮蔽などの外皮対策については平凡であり、設備の充実度に比べれば見劣りがする。しかし、先述のように、省エネビルの研究者にとっては強烈なインパクトを受ける建物であり、この建物を題材にした優れた論文が発表されることを大いに期待したい。