国土交通大臣賞第3回サステナブル建築賞(その他ビル部門)
「日産先進技術開発センター」
撮影:木田 勝久
建築主 | 日産自動車(株) |
設計者 | (株)日本設計 |
施工者 | 清水建設(株) |
建設地 | 建設地 |
構造 | S造、一部RC造 |
階数 | 地上7階地下1階 |
延床面積 | 69,471m2 |
講評
本建物は神奈川県厚木市に自動車新技術開発で求められる知的創造のためのオフィスづくり、つまり先行開発の仕事環境を創造するために提案された建物であり、設計者は
・五感を刺激するオフィス(自然な刺激)
・コミュニケーションを活性化する空間構成(偶発的インタラクションを誘発)
・フレキシブルで見通しのよい大空間(有機的・流動的な組織に対応)
・工房のような空間(モノで発想できる)
と解釈し、空間の仕掛けとして、劇場型ステップワークプレイスという階段状の仕事環境、グリーンキューブという事務スペースへの植栽環境の取り込み、空中散歩階段というワークプレイスから突出した空中に浮かぶ階段、ノマドカフェという発想の転換を可能とする喫茶スペース、シースルー機械室という職場の中心に配置された機械室などを大胆に表現している。
環境的側面から見ると、本建物は大きな北側に傾斜したガラス屋根が特徴的であり、長所も短所もそのガラス屋根に起因しているといえる。その環境調整技術は、ルーバーデッキによる日射遮蔽と視界の確保の両立、散水システムによる冷却、low-eペアガラスによる断熱、局所排気による熱だまり排熱やコールドドラフトの排出、ロールスクリーンによる日射遮蔽、自然換気による大空間の換気、加圧式床吹き出し空調による居住域空調などであり、ガラス屋根の大空間内には自然環境を執務室のより近くに取り入れるためのグリーンチューブというガラスの緑豊かな中庭空間を設けている。その結果、四季折々の気象や植栽の刺激を十二分に取り入れたワークプレイスの快適環境を作り上げているといえる。これらの効果を検証するために夏期冬期中間期の実測を行っている。また建設行為に伴う環境破壊を防止するために、地形の修復、水景の修復、植生の修復など環境修復にもかなりの力を注いでいる点も十分評価できる。
生産技術効率が欧米に比べて低下している我が国において、本建物の提案しているイノベーションを引き出すワークプレイスは「見る」「考える」「作る」「確かめる」という最先端の知識創造サイクルモデルを具現化したものであり、今後のワークプレイスづくりに大きな波及効果を与えるものといえる。よって大臣賞に十分価値あるものと認められる。