国土交通大臣賞第4回サステナブル建築賞(事務所建築部門)
「大林組技術研究所本館 テクノステーション」
建築主 | (株)大林組 |
設計者 | (株)大林組 |
施工者 | (株)大林組 |
建設地 | 東京都清瀬市 |
構造 | S造 |
階数 | 3階建 |
延床面積 | 5,535m2 |
講評
本建物は緑の豊かで閑静な東京郊外清瀬市に立地し、技術の革新・実証・発信を目指す大林組技術研究所のセンターワークプレイスである。最先端の研究施設・環境施設・安全安心施設として、サスティナブルな空間を構成している。設計でのアプローチにおいて、自発的バックキャスティングと呼ばれる手法を用いて、知的生産性に配慮した省エネルギー、CO2削減アイテムに展開している。
創造的ワークプレイスの構築のために、視認性が高くフレキシブルなワンボックス型大空間による相互交流性の高い新たな空間構成を成している。また最高水準のCO2排出削減率55%を得るために建築と設備の融合的な取り組みを行っている。デザイン的も美しい昼光利用エコロジカルルーフシステム、高さのある空間と緑地を見事に利用した自然換気システム、快適かつ省エネな潜熱・顕熱分離型パーソナル空調システム、ICタグによる新照明・空調システムなどの技術が採用されている。構造的にもスーパーアクティブ制震を採用し安全安心な建物としている。その他にも様々な省エネ・CO2削減技術を採用しCO2排出削減率55%(単位m2当たり)という国内最高水準の実績、CASBEE Sランク、BEE値7.6という極めて高い環境性能を達成している。
また、冷暖を机上、足元に放熱面を切り替えるというアイディア、ICタグによる照明、空調制御、自然換気ONスイッチの見える化などはプリミティブな手法過ぎるかも知れないが、将来性を秘めている技法といえ、居住者にエコ意識を植え付けるという大きな影響力を有している。例えば自然換気の発停は、運転条件が整うと居住スペースの大きなパネルに自然換気の許可表示がされ、居住者がONスイッチを入れたときに初めて自然換気が行われるというものである。また停止は居住者判断ではなく自動制御で行う。他には、本ガラス建築に対してペリバッファ方式を採用しインテリア部の安定環境を得るようにしているが、このバッファゾーンを居住者がコミュニケーションエリアとして如何に活用して行くかを見守っていきたい。そしてこの天井高の十分なワンルーム型建築を客観的に評価するには、m2当たり原単位のみでなく、真の知的生産性で評価されるべきだが、世の中の知的生産性の研究レベルがまだ追いついておらず、技研本来の任務の効率(論文数など)を今後調査してゆくべきであろう。
我が国のサスティナブル建築として模範となる優れた建物であり、国土交通大臣賞に充分価値あるものと認められる。