審査委員会奨励賞第4回サステナブル建築賞(事務所建築部門)
「トヨタ紡織 猿投開発センター2号館」
建築主 | トヨタ紡織(株) |
設計者 | (株)日建設計 |
施工者 | 清水建設(株) 高砂熱学工業(株) ジョンソンコントロールズ(株) 川北電気工業(株) 川崎設備工業(株) |
建設地 | 愛知県豊田市 |
構造 | RC造、S造 |
階数 | 地上8階地下1階 |
延床面積 | 43,740m2 |
講評
田園風景の中の工場に併設して建設された研究開発センターである。研究開発の対象は自動車のシートである。実験施設も有する大規模な建物である。オフィスフロアも当然あるが、実験施設の広い面積を占めており、事務所部門としての審査にはやや違和感がある。この建物では、オフィスフロアといっても、大都市の先端オフィスビルのそれとは異なり、無機質な広いフロアに平凡な机と椅子が単純に並んでいるだけである。
この建物は通風(外気の導入)と冷房の省エネ対策に力を入れている。とくに外気が通過する経路については十分に計画がなされている。オフィスフロアの高窓から取り入れられた風(外気)は天井裏を通り、建物の中央に位置するボイドに入り、ボイドの屋上部分から外に逃げる。ボイドの屋上部分にはスウィンドウ(風圧によって開閉が行われる窓であり、排気の場合しか窓は開かない)が設置され、上部からは排気のみが行われるようになっている。こうした通風による冷房負荷の削減が実際にどれくらいの効果をあげているのか、コミッショニングにおいてもいまひとつ詳細には分析されていないが、実際のエネルギー消費量のデータを見ると、かなりの効果があるものと推測される。冷房システムもインバーターターボ冷凍機、蓄熱層、フリークーリング、床吹出し、ハイブリッド空調(通風との併用)など、充実した省エネ対策が取られている。もちろん、深いバルコニーや遮蔽スクリーンなどのペリメーターの冷房負荷削減対策も十分である。暖房の負荷削減対策は複層Low-Eガラスやサーバー室との排熱回収を空冷チラーで行うということであるが、サーバーがまだ想定の1/3の設置なので、暖房のエネルギー効率は現状では高くなっていない。
自然採光についても、ライトシェルフなど対策が取られており、省エネには積極的である。また、エネルギーマネジメントにおいても、コミッショニングや節電会議など積極的な活動が見られ、評価に値する。しかし、冒頭の記述からも推測がつくように、気持ちのよい生産性の高い省エネオフィスを建設したか、と問われれば、答えは「no」である。むしろ省エネを追及した研究所を建てたと言える。よって、「奨励賞」が妥当である。