理事長賞第5回サステナブル建築賞(事務所建築部門)
「ヒューリック本社ビル」
建築主 | ヒューリック(株) |
設計者 | (株)日建設計 |
施工者 | 大成建設(株)・飛島建設(株)共同企業体 |
建設地 | 東京都中央区 |
構造 | S造、SRC造、一部PC造(免震構造) |
階数 | 地上10階地下1階塔屋1階 |
延床面積 | 7,688m2 |
講評
地上10階、地下1階、延床面積7700m2の事務所ビルである。テナントビルとして計画され、関連会社も入居する本社ビルとして使用されている。計画のコンセプトは安心、環境、快適、を「かたち」にすることであり、これを最先端の技術で実現している。
このうち環境については“省CO2型ビルのプロトタイプ”を実現することを目標として、
①都市型テナントビルにおける自然換気手法の開発、②都心の中規模建物に適した省CO2手法の導入、③テナントビルにおいて自然エネルギーを最大限に利用する、の3つをテーマに各種の開発を行っている。CO2排出量の削減目標は40%である。また、ここで開発された手法を建設主の所有する他のテナントビルに展開することにより、保有ビル全体で25%のCO2排出量削減を目標にしている。
このビルで特筆すべきは、自然採光と自然換気についての試みである。
自然換気に関しては、外気の粉じん濃度や外部騒音を測定して外気利用の有効性を確認した上で、浮力換気効果を持続させるためにコンクリート蓄熱とPCMを導入、階による均等な空気の流れを得るために2本のシャフトを設置、浮力換気を補助するためのアシストファンの導入、などにより外部風が無いときでも概ね5回換気の風量と確保できるようにしている。
自然採光については、特殊形状の固定ルーバーを開発し、天井材の材質にも配慮して、自然採光を導入する試みを行っている。この固定ルーバーの開発においては、シミュレーション、モックアップ、実測によりその効果を確認している。この自然採光の導入に加えて、LED照明、照明制御システム、を採用し照明電力を大幅に減らしている。
この他、窓まわりの計画として、アウトフレーム、庇、low-E複層ガラス、木製ブラインド、ペリメータファンなどを採用し、建築デザインとの整合をはかりつつ熱負荷の削減を図っている。
モニタリング、コミッショニングなどにも積極的に取り組んでおり、アンケートによる居住性能の確認も行われていて、質の高い計画・設計、施工、コミッショニングが行われている。以上のような取組は、従来の中規模事務所ビルではほとんど見られなかったものであり、中規模事務所ビルの今後の在り方を示すものと評価できる。
なお、エネルギー消費量は基準ビルに対して約40%減の1386MJ/m2・年であり、専有部の年間でのピーク電力は、空調39W/m2、照明5.5W/m2、コンセント3.5W/m2である。