IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

理事長賞第5回サステナブル建築賞(商業施設その他部門)

「さくらインターネット石狩データセンター」

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建築主さくらインターネット(株)
設計者大成建設(株)
施工者大成建設(株)
建設地北海道石狩市
構造S造
階数地上2階
延床面積11,392m2

講評

 本施設はサーバを設置・管理することに特化した施設である「データセンター」である。そして、このサーバからの内部発熱処理が空調システムの主目的であるデータセンターの今後の一つのあり方を下記のように積極的に提案する作品である。本施設は、BCP(Business Continuity Plan)またその手段のひとつとしてのDR(Disaster Recovery)を考慮したものであり、地震発生確率、液状化リスクなどの低い立地である石狩に建設された。そしてこの立地がゆえに北海道の冷涼な気候を活用した外気冷房がほぼ通年で可能であり、空調にかかる消費電力の大幅な削減が可能となっており、データセンターに於ける電気効率を示す指標の一つであるPUE(Power Usage Effectiveness=データセンター全体の消費電力/IT機器による消費電力)を1.1台という値を実現している(従来の都市型データセンターでは1.5~2.0のPUE値が一般的といわれている)。具体的な評価項目は以下のようになっている。
■100%外気冷房を可能とするための外気導入ルートを確保するための、建築・構造・設備が一体となった断面計画
卓越風向を考慮して外気を低風速で導入できる構造、多雪地帯であるので暴風雪害を防ぐ構造を実現しており、また海風による塩害の対策が十分になされている。
■サーバー室の空調計画と排熱利用
サーバー室の空調において壁吹出し方式を採用し、サーバー室壁面にファンを直付としてファン動力を天井吹き出し方式の40%削減を実現し、PUE値を1.07(外気冷房時)、1.19(平均)とした。また、サーバー室の排熱利用として、ビルマルチの室外機導入空気としての利用による暖房効率向上、OAフロア内・エントランスホールピット内の余熱、ロードヒーティングなどに活用している。
■性能検証
断面形状を一部再現したダブル折板外装材のモックアップ実証実験を行い、雪庇、氷柱の影響、結露の有無などで確認、また除塩フィルターの検証実験、サーバーラック排熱効率実験を行うなど設計・施工における性能検証が行われている。また、運用時のデータ分析を十分に行うことにより設計時の予測性能の実現を確認するとともに、チューニングによるさらなる省エネルギーの実現を行っている。またさらにこれらの知見を次期の拡張における設計に着実にフィードバックしている。
上記のように綿密にまた着実に計画され、また運用における性能検証も確実に行われている作品である。

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