審査委員会奨励賞第5回サステナブル建築賞(事務所建築部門)
「第一生命新大井事業所」
建築主 | 第一生命保険(株) |
設計者 | (株)竹中工務店 |
施工者 | (株)竹中工務店・日本建設(株)共同企業体 |
建設地 | 神奈川県足柄上郡大井町 |
構造 | RC造、SRC造、S造 |
階数 | 地上4階地下1階塔屋1階 |
延床面積 | 44,488m2 |
講評
本作品は東名高速道路のインター近くにあった旧事業所の機能の一部を担う新事業所として、酒匂川に近い住宅や農地の多い平坦地に建てられた郊外型オフィスである。計画に当たり、①周辺環境との調和、②快適性生産性向上、③ZEBへのソリューション、という3つの課題に対して、よく練られた根源的な取り組みをしている。
本作品は生命保険会社の事業所という非常にセキュリティレベルの高い建物でありながら、排他的にせず、逆に「建築を開く」という手法で、周辺環境の一部として融け込む謙虚さを持っている。最近のサステナブルと称する建築では、環境が持つポテンシャルを強圧的に搾取するかのような自然エネルギーの利用の仕方が多い。しかし、本作品のような謙虚な姿勢は、今後の我が国独自のサステナブル建築の在り方を示す先駆けとして、高く評価することができる。
さらに、ことさら奇を衒わずに意外とシンプルでオーソドックスな建築手法を丁寧に選りすぐってこれらの目標を達成していることも、評価に値する。エネルギー収支としては、既にnearly ZEBの領域に達しているが、今後の改修でnet ZEBへの進化も視野に入っている。往々にして複雑怪奇なものは想定通りに運用されないという事実を考えると、これはサステナブル建築の本義かも知れない。
現地審査の説明に、本作品の発想のひとつに「エコの究極は小学校」という説明があったのが印象深い。全体的に過剰な作り込みを避けたロバスト性の高い建築に仕上がっており、そこで働く人々の満足感が非常に高いことも、将来長いあいだ精気を放ち続けることができる真のサステナブル建築の証である。