審査委員会奨励賞第5回サステナブル建築賞(小規模建築部門)
「WOOD(ずだじこども園)」
建築主 | 学校法人頭陀寺学園 |
設計者 | (株)ナウハウス、中部大学 田中英紀 |
施工者 | (株)杉浦建築店 |
建設地 | 静岡県浜松市 |
構造 | 木造(一部RC造) |
階数 | 地上2階 |
延床面積 | 997m2 |
講評
WOOD(ずだじこども園)は、浜松駅の南東、川沿いの田園地域に、既設の幼稚園に隣接する形で建てられた0歳児から5歳児までの約60人が通う、木造の認定こども園である。
温暖な地域とはいえ、冬は風が吹きさらす平地の田園に立地するため、敷地の外縁側に保育室などの主要な部屋を置くことで子供たちが遊ぶ中庭への風をよけ、これらの各部屋を、一周100mの環状の背の高い回廊により中庭を囲う形で各部屋をつなぐ平面計画となっている。これらの主要な諸室は、断熱性と気密性を確保したものとする一方、回廊は波板ポリカーボネート板で覆い、低断熱だが熱的なバッファー空間となるように計画しており、また、この回廊の床下の空間は外気を取り入れる際のアースチューブとして利用されている。全体的に、設備機器にあまり頼らない素朴な環境対策により、エネルギー消費の削減と、快適さの確保を図った計画となっている。
建物の外観は、主要室部分の外装のガルバリウム鋼板と、背の高い回廊部分の木の構造部材に直接ネジ留めした波板ポリカーボネート板とが、まず目に入る。こども園としては、かなり、さっぱりとした、ラフな外観であるが、建設費を抑えるために、割り切って、例えば、ポリカーボネート板のようなどこにでもある安価な材料をラフな納まりで止めつけ、もし傷んできたら、さっさと取り替えるようなことを想定しているとこのことである。一方、建物の内部は、木の素地を露わにした、柔らかな気持ちのよい空間となっている。
この敷地の近隣で育ち、今もこの地域に事務所を構えている設計者は、この建物の施主とは幼馴染で、隣接する既設の幼稚園をはじめ、いくつかの建物を、この施主と、この地域に建てているとのこと。建物の部分について、一般的には、ちょっと難がありそうに感じられるようなところも、お互いのことをよくわかりあっている施主との話し合いの中で、こだわったり、割り切ったりして、決めていったとの話であった。
その地域に育ち、そこの風土と、そこにいる人とを、よく分かっている設計者が、その時々に、なにが一番必要であり、どうすることが適切であるかを判断することによりつくられたサステナブルな建築であると評価するものである。