理事長賞第6回サステナブル建築賞(事務所建築部門)
「明治安田生命新東陽町ビル」
所在地 | 東京都江東区 |
構 造 | S造(一部RC造)、免震構造 |
規 模 | 96,911m2 地上12F/塔屋1F/地下1F |
建築主 | 明治安田生命保険(相) |
設計者 | (株)竹中工務店東京本店 |
施工者 | (株)竹中工務店東京本店 |
講評
この建物を特徴付けているのは、約100m角の巨大な平面である。その平面に対して、中央部に内・外部の入れ子状の吹抜空間を配することで、大・小のプレートへと分節化し、執務空間の奥行きを30m程度に抑え、両面採光を確保することが提案されている。さらに、床レベルをスキップさせてフロア間のつながりを生み出し、巨大な平面でありながらも圧迫感を与えない室内となっている。加えて、東西面へのコア配置、南北面への設備室・軒の深いバルコニー配置といった平面計画の工夫によって、複雑なファサードエンジニアリングに頼ることなく、方位に応じた環境制御が行われている。新奇な技術だけでなく、ベーシックな計画上の工夫・配慮の重要性があらためて示されたものといえよう。
さらに、巨大平面が圧迫感を与えないように、構造システムとダクトルートを重ね合わせて十分な天井高さを確保し、そこに放射効果を加味した空調システムを適用するなど、空間の特性を生かした設備・構造計画が重ね合わされている。
結果として、自然の変化・空間の広がりが感じられ、エンドユーザーの快適性の向上に結びつく執務環境が、少ない環境負荷で実現されている。単に技術的に優れているにとどまらず、あるべき執務空間に対する設計者の深い思索・思想が読み取られる建築となっている。むやみに平面が巨大化する日本のオフィスビルの傾向に対する、スケールの大きな提案ともいえる。
この建物のもう一つの特徴として、複合性が挙げられる。1Fに配送センター、低層階に生活利便施設、上階には宿泊施設が配されており、オフィスの中間階には24時間稼働のシステム開発セクションが挟み込まれている。すなわち、この建物は規模が大きいだけでなく、一つの「街」のような多様性、複合性をもっている。基準階平面の積層では納まらない複雑なプログラムの中に、ソーラーチムニーによる空気の流れ、中央の吹き抜けによる採光といった断面的な環境配慮要素が無理なく組み合わせられている。「街」スケールでの環境配慮の意義、そして可能性を謳うものでもある。
平面計画、断面計画、設備システム、構造形式が見事に総合化され、街のようなスケールで実現した、完成度が高くかつ提案性をもった建築といえる。ここに高く評価するものである。