IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

理事長賞第6回サステナブル建築賞(商業施設その他部門)

「福島白河第一データセンター」

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所在地 福島県白河市
構 造 S造
規 模 14,774m2 地上4F/塔屋1F
建築主 ヤフー(株)、(株)IDCフロンティア
設計者 (株)日本設計
施工者 新菱冷熱工業(株)

講評

東北本線が県境を越えて福島県に入ると、白河市がある。本施設はその「みちのく」入口の高台に位置し、東日本大震災後にいち早く当地に進出したデータセンターである。
施設全体の信頼性を損なわずに、厖大なサーバーの発熱を如何に効率よく冷却するかがデータセンターの課題だが、本施設は建築と設備が一体となり、比較的冷涼で降雪の少ない気候を活かしながら、この問題に答えている。アナロジーで例えれば、核心の「脳」の機能を維持するために、呼吸器、循環器及び消化器などが融合した「生命体」が、サイトの環境に適応した姿ともいえる。
「脳」の冷却には、比較的冷涼な外気を、サーバー棟に効率的に導いて行う「呼吸」のような直接利用と、「循環器」や「消化器」にあたるポンプや冷凍機を使用する間接利用を、巧妙に組み合わせている。前者は、まるで空気の気持ちになったかのような合理的なエアフローを建築のボキャブラリーで実現し、給排気ガラリの防雨・防雪対策、無数にあるダンパの漏気対策、万一の漏水の排水など、ディテールに至るまで考え抜かれている。通常は中途半端な収まりになりがちなサーバーラックと建築の取り合い部分なども、充分に検討されている。外気を処理するフィルタの自動洗浄機さえも機械室の一角に備えて自家再生する徹底ぶりだ。
実際の運用面においても、外気を利用するモードの綿密な設定からシステムの冗長性の精査や火災時の検知方法に至るまで、非常に緻密な理論構築が為されている。中央監視の画面では空調の運転状況を湿り空気線図上に明示させたり、サーバールームの温度分布をリアルタイムでグラフィカルに可視化するなど、高度な作り込みがされている。そのため、管理者が安心して運用している印象を受けた。また、昼夜二交代のオペレータも、システムをよく理解して意欲的に取り組んでいる。さらに、受変電の系統切り替え試験など、事業者が通常は避けたがる高リスクな実負荷試験も、設計・施工・運用者が一体となって充分な安全確認の元に敢行し、信頼性の高さを裏付けている。
このセンターが目標とする電力使用効率(PUE)は1.2と、世界的にも非常に厳しいハードルを設定している。建築全体が環境に調和した「生命体」は、この高い目標を年間で達成できる見通しという。

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