理事長賞第6回サステナブル建築賞(商業施設その他部門)
「あべのハルカス」
所在地 | 大阪府大阪市 |
構 造 | S造,SRC造,RC造 |
規 模 | 353,393m2 地上60F/塔屋1F/地下5F |
建築主 | 近鉄不動産(株) |
設計者 | (株)竹中工務店大阪本店 |
施工者 | (株)竹中工務店大阪本店、(株)奥村組、(株)大林組、大日本土木(株)、(株)錢高組 |
講評
ターミナル開発による沿線価値向上や事業基盤拡大のコアとなる都市型の巨大な超高層複合ビルである。延床面積約212,000m2のタワー館には、オフィス約62,000m2、百貨店約82,000m2、ホテル約35,000m2、他33,000m2が集密し、それらが立体的な経路、ボイド、緑のネットワークによって有機的につながる垂直都市ともいえるビルである。
今後も都市集中化が進むとすると、超高層ビルはその中核となるものではあるが、中低層ビルに比べると、従来から大幅な省エネ・省CO2が難しいとされてきた。あべのハルカスは、超高層、複合用途ならではのサステナブル技術の開発と組み合せによって、この難しい課題に意欲的に取り組んでいるところが高く評価された。
例えば、屋上だけでなく壁面への雨水も貯留し、ホテル排水と併せて処理する中水再生利用、エレベータ回生電力やホテル排水の落水発電、レストランから出る生ごみを使ったバイオマス発電、これらの発電に加えて太陽光発電やマイクロ風力発電、非常用発電機、蓄電池設備などとも連携した建物内マイクログリッド、エコボイドによる百貨店、オフィス、ホテルへの外気導入と自然換気、百貨店の冷房排熱をホテルの給湯予熱に利用するエリア熱回収、既存百貨店の熱源と連携したエリア熱融通、調色LED照明器具の開発と大規模導入といった、多くの技術的工夫とカスケード的なシステム化がなされているところに大きな特徴がある。こういった取り組みにより、あべのハルカスは、約2,600 MJ/m2年の年間1次エネルギー消費量と約15,000 t-CO2/m2年の年間CO2排出量という竣工1年目の実績を残しており、標準的なビルと比べておよそ35%の削減に成功している。
都市持続化の観点において、超高層ビルの省エネ化は重要な1つのキーポイントだと考えられる。よって、あべのハルカスで35%の省エネが可能であることが実態として示された意義は大きい。一般に、竣工1年目は、実際の負荷に合わせて設備システムをチューニングする段階であるが、その後の継続的な性能検証やICT活用によるエネルギーマネジメントの確立を通して一層の省エネが実現される可能性が高い。
今後の取り組みにも引き続き注目したい建築である。