審査委員会奨励賞第6回サステナブル建築賞(事務所建築部門)
「大成建設技術センター ZEB実証棟」
所在地 | 神奈川県横浜市 |
構 造 | RC造(一部PC造)、免震構造 |
規 模 | 1,277m2 地上3F/塔屋1F |
建築主 | 大成建設(株) |
設計者 | 大成建設(株) |
施工者 | 大成建設(株)横浜支店 |
講評
この建物は、建設会社・技術研究所内にZero Energy Building(ZEB)の実証を目標として建てられた地上3階建て(RC造)の建築作品である。2014年5月に竣工して、その後2015年6月までの一年間で、太陽電池による生産電力量とこの建物で必要とされるエネルギー使用量とがバランスすることを実証している。
この建物では、その計画の一環として、自然エネルギー利用システム要素の一つとして有機薄膜太陽電池外装ユニットが開発されている。これは、太陽電池の設置が屋根面だけに可能と考えられがちなところを、壁面も有効利用できるようにしたいと考えてのことで、新築・改築の双方において将来の都市空間で必要になるに違いない試みである。開発されたユニットは、この建物の2~3階部分バルコニー空間の外側に設置され、バルコニーは庇・袖壁として日射遮蔽に有効であると同時に太陽電池による発電も行なえているところがとても良い。
また、太陽電池利用一辺倒になることなく、T-Light Cubeと称する昼光照明システムを採用していることもよい。このシステムで雰囲気照明を実現し、一方で、有機ELタスク照明を、雰囲気の所要照度300Lx、タスク400Lx、合計700Lxとして実現している。結果として、照明用電力需要は減り、太陽電池の自家消費割合を増すことに成功したと思われる。延いては、照明発熱密度が2W/m2となり冷房負荷の著しい削減を実現したために、合理的な放射冷房システムを可能にしている。
以上のようなエネルギー需要を小さく抑えることから出発した建物計画に加えて、利用者(執務者)の意思を反映できるような建物の使い方促進を重視した工夫があって、この建物におけるエネルギー需要は一般建物の約25%となり、この25%分を太陽電池により賄うことに成功している。この成果を高く評価したい。