審査委員会奨励賞第6回サステナブル建築賞(事務所建築部門)
「生長の家“森の中のオフィス”」
所在地 | 山梨県北杜市 |
構 造 | 木造(一部S造) |
規 模 | 8,154m2 地上2F |
建築主 | (宗)生長の家 |
設計者 | (有)野沢正光建築工房、(株)科学応用冷暖研究所、清水建設(株) |
施工者 | 清水建設(株)関東支店 |
講評
八ヶ岳南麓のなだらかな斜面には樹海が広がっており、その森の中に埋もれるようにして、忽然と6棟の木造オフィスが現れる。まさに理想郷のイメージである。東京の原宿にあった教団本部機能をこの地に移設するにあたって、環境問題に積極的に取り込むことをめざして計画がスタートした。環境コンサルタントがプロジェクトの当初から参画し、全国の候補地からこの敷地が選定され、簡易的な環境アセスメントを含めプロジェクトが完成するまでに10年という長い年月を要した。
配置計画は、敷地東西の沢を避けた緩やかな勾配の南斜面に分棟配置されていて自然地形を見事に読み込んでいる。素材の選定にあっては、ひまわり油を使った自然素材の塗装を施したカラマツ集成材など現地産の木材を構造、外壁、擁壁の土留めに使用しており、擁壁の石積みと床下蓄熱用の砕石は、掘削時に出た自然石を利用するなど敷地内から発生した材料や地元産の材料を積極的に利用している。
エネルギーについては、周辺環境の生態系保全を前提に日本初の完全ZEBを最終的な目標として計画された。夏季の冷房は行わない自然通風の利用、化石燃料ゼロを目標に自然エネルギーや再生可能エネルギーによって得られる電気・熱エネルギーを積極的に利用している。通常の太陽光発電パネルは、屋根形状と連動することなく設置されることが多いが、ここでは建築意匠とエネルギー確保のコンセプトがうまく融合している。途中で勾配が変化する屋根形状は、緩い勾配のところは140k太陽光発電パネル設置(集電)、急勾配のところはOMソーラー(集熱)になっており独特の妻面を創り出し、6棟並ぶことでリズムが生まれている。木質ペレットとオイルのデュアルで発電するバイオマスガス化コージェネレーションやプリウス90台分のリチウム電池を設置するなど新しいテクノロジーにもチャレンジしている。近代化する前の生活に戻る前提ではなく、現代先端社会での生活を行いながら自然環境との調和を目論み、「省エネと創エネ」を駆使した理想郷的モデル社会の構築を考えた人間味も加味した先駆的プロジェクトとして高く評価された。