審査委員会奨励賞第6回サステナブル建築賞(事務所建築部門)
「静岡ガス本社ビル」
所在地 | 静岡県静岡市 |
構 造 | SRC造、S造、制振構造 |
規 模 | 7,516m2 地上6F |
建築主 | 静岡ガス(株) |
設計者 | (株)日建設計 |
施工者 | 清水建設(株) |
講評
静岡駅南東に位置するエネルギー会社の本社ビル建て替え計画である。長い日照時間と穏やかな季節風を自然換気に活用可能である地域、気候風土に根ざして、光と風を最大限取り込む建築デザインに各種の先進的手法を組み合わせた、美観にも優れた建物だ。
2本の組柱構造によって実現したフレキシビリティの高い無柱の大空間は、間仕切りのない家具レイアウトとあわせて、光と風をむらなく室内に導くことができる。さらに階段室やEVシャフトをガラス張りにすることで、四方向からの採光を可能としている。また、調光照明と人感センサー付きのLED照明を組み合わせることで、アンビエント域とタスク域の照度を確保すると共に高い省エネルギーを実現している。
地域産材の天竜檜を巧みに利用したルーバーとバルコニーによって、拡散光導入と日射遮蔽を可能としたファサードの計画には見るべきものがある。ペリメータ部にはLow-e複層ガラスと簡易エアフローシステム、及び太陽熱とコジェネ排熱を利用した温水ヒーターを併設して冬季のコールドドラフトを防止している。
天井に設置された自然換気エコサインは、執務者に自発的な窓空け行動を促す仕掛けであり、自動換気窓では実現できない降雨時や外気低温時にも対応することができる。
再生熱源としての太陽熱とコジェネ排熱、冷熱源としての井水熱とアースチューブの地中熱を用いたデシカント外調機に、床吹出し空調方式を計画することによって、潜熱・顕熱分離型タスク・アンビエント空調を実現した。コージェネレーション排熱と太陽熱を並列に接続し混合した高温水を、冷房、デシカント再生熱、暖房、給湯へとカスケード利用する先進的なシステムを構築している。太陽熱集熱システムには、直列と並列を切り替える独創的な方式を採用し、季節に応じた最適運用を行っている。
竣工後2年間で国内外の3,000名を超える見学者を招く環境見学会を開催するなど、全社を挙げての省エネ啓蒙活動に励んでいる。また、コミッショニングを通じたチューニングなどを計画的に実施しており、運用面でも高い省エネルギーを実現していることは高く評価できる。省エネ性能が高い、バランスのとれたサステナブル建築の秀作である。