IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査委員会奨励賞第6回サステナブル建築賞(小規模建築部門)

「三建設備工業 つくばみらい技術センター 」

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所在地 茨城県つくばみらい市
構 造 RC造
規 模 2,258m2 地上3F
建築主 三建設備工業(株)
設計者 三建設備工業(株)事業開発本部
施工者 三建設備工業(株)東関東支店

講評

郊外型の低層の小規模建物におけるZEB改修の好例である。竣工から15年以上経過した研究施設である既存建物を、改修によってゼロエネルギー化することをコンセプトとしている。事務所と実験室をもつ建物の特徴や運用状況、立地条件を踏まえて、消費エネルギーと負荷の削減を図っている。建設地の地下には帯水層が存在しており、法的揚水規制を遵守した上で十分な揚水量を確保することができる。消費エネルギーを削減するために、再生可能エネルギーである地中熱と太陽熱を直接利用する空調方式を導入しており、負荷の削減には、建物の断熱強化と照明負荷の削減によって対応している。
再生可能エネルギーを直接利用する潜熱・顕熱分離型空調システムにおいて、顕熱処理用にスリット付きアルミ製パネルを用いた天井放射空調システムを、また潜熱処理用にデシカントコイルシステムを採用している。これらのシステムには、地中熱冷水と太陽熱温水を直接供給することで、熱源機の稼働を必要としないコンプレッサーレス空調システムとしての運用が可能となった。再生可能エネルギーの直接利用で空調負荷が賄えない場合のバックアップとして、地下水熱源による汎用水冷チラーも備えられている。
建築的な特徴としては、事務室空間とアトリウムが隣接した配置となっている。執務室の窓とアトリウム上部に位置するハイサイドライトを開放することによって、効果的な自然換気が実現できる。また、外気条件を判定して自然換気可否の状態を表示することで、冷房期においても積極的な自然換気を促す工夫がなされている。執務室には、屋外照度や人在検知による照明制御も採用している。
創エネルギーシステムとしての太陽光発電パネルは、改修開始時の計画に続き、運用検証を経て全建物の消費電力量に適応した容量へと順次増設されてきた。イニシャルコスト低減も考慮した断熱強化は、事務室や会議室等が配置されている東側面を主体に施されており、外断熱工法とLow-e複層ガラスが採用されている。
これらの取り組みは提案者の研究に供するための改修実験という見方もできるが、その熱源、空調、電気設備の改修における積極的なチャレンジは、国内に多数存在する同規模の既存ストックの見直し計画に一石を投じるものである。

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