IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞第7回サステナブル建築賞(中・小規模建築部門)

「竹中工務店 東関東支店」

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所在地 千葉県千葉市
構 造 S造・RC造
規 模 1,318m2  地上2F
建築主 (株)竹中工務店
設計者 (株)竹中工務店 東京本店
施工者 (株)竹中工務店 東京本店

講評

建築技術の百貨店さながらの多彩な保有技術から繰り出されたテクノロジー群は、この小さな事務所に洗練された姿を見せた。様々な視点から多岐に亘る技術を組み合わせると往々にして総花的になりがちだが、この作品では高次元の強い理念のもとに取捨選択され、しかも既存ビルの居ながら改修という制約を超え、複雑に絡み合いながらも一本筋の通ったすがすがしさを感じさせる。
本作品は、①快適性の考え方を変える、②スーパー省エネビルを作る、③スマートな働き方を考える、④災害にも強くなる、という4つのコンセプトのもとに、既存建物のシンボル的な端正なファサードをダブルスキン化し、太陽熱・地中熱利用等の最新省エネ技術の適用に加え、室内快適性のあり方・働き方といったソフト面を見直し、個人の活動状況や好みに合わせて室内環境を制御するウェルネス制御の採用などを実現している。これらはZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化普及に向けての「風穴をあける取り組み」という。
この改修はZEBを目指して計画が立てられたとのことだが、現行の一般的な定義では、そのエネルギー収支からOA機器などのコンセント負荷を除外できるやや緩やかな基準になっている。ところが、本作品ではコンセント負荷を含んだ一次エネルギー収支がプラス(ネット・プラス・エネルギー・ビル)になるように、自ら厳しい計画が立てられ、実際の運用においても見事にこれが達成されている。
このプロジェクトは、モデルオフィスではなく実際に支店業務を行っている建物であることと、既存建物の改修という点に特徴があるが、現実にはどちらも高いハードルである。執務者はどうしても現状をベースに考えるので、ワークスタイルを変える提案には同じ社内といえども容易に賛同が得られないこともあったかと想像される。また、もとの建築の素性がよかったとはいえ、居ながらの改修は難易度を更に高めたのではないかと思う。それから敷衍すれば、技術が単に技術として語られるのではなく、実際の空間として結実させ、歓びをもって運用されるまでの総合力の存在を感じることができる。本作品は、建築にはテクノロジーの寄せ集めでは及ばない高度なプログラムが重要であることを、われわれに語りかけている。風穴はあいたのである。

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