IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査員会奨励賞第7回サステナブル建築賞(大規模建築部門)

「関東学院大学 建築・環境棟(5号館)」

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撮影:⿃村 鋼⼀

所在地 神奈川県横浜市
構 造 S造、RC造、SRC造
規 模 3,750m2  地上5F/塔屋1F
建築主 学校法人 関東学院
設計者 関東学院大学 建築・環境学部/(株)日本設計
施工者 (株)竹中工務店 横浜支店)

講評

大学と企業が協働することによって、建築・環境学部をもつ大学の教育拠点を計画したものである。新しく誕生した学部における教育カリキュラムと連動した空間構成を持つ「学びの場」として活用されているシンボリックな建物だ。延べ床面積が約4,000m2弱のコンパクトな建物には、製図室、スタジオ、演習室、ラウンジ、ホールなどの多様な目的をもった居室がバランスよく配置されている。
周辺建物の影響と、季節や時間帯によって変化する日射や風の環境分析を徹底して行うことで、地域の環境特性を十分に読み解き、自然環境を効果的に取り込むための建築をデザインすることに成功している。特徴的なファサードを形成しているのは、逆日影シミュレーション(どれだけ日照を得られるか)や自然換気シミュレーションに基づくマルチ・モード・ダブルスキンと手動式可動ルーバーである。マニュアル操作でダイナミックに変化するファサードは、パッシブデザインのコンセプトを具現化したものであり、そのポテンシャルを活かすのは建物利用者である学生たちのアクティブな行動である。この建物を活用した教育実践カリキュラムが、建物の随所に散りばめられている技術を使いこなすこと、即ち「人センサー」である学生たちの正しい行動変容を促すことに一役買っている。自動制御に頼らない手法はコスト削減にも繋がるが、教育効果の高さに注目した試みであると考えられ、これを高く評価したい。
各居室の特性を踏まえた複数種類の空調システムの導入にも目を見張るものがある。空間の三次元的な大きさや、快適性の要求レベル、利用時間の特徴などを精査することによって、最適・最良なシステムを構築している。採用技術として、天井の高い製図室にはシーリングファンとガスヒートポンプを組み合わせ、スタジオには露出型の垂直放射パネルを仕込んだ新開発の放射対流空調方式を備えており、さらにラウンジにおける大面積放射パネル、多目的ホールの床吹出し空調方式など多彩である。
継続的なコミッショニング活動によって、中間期のエネルギー消費を半減してZEB Readyも達成している。耐震性能や非常時の水確保にも配慮したレジリエンス性能も見逃せない。大学教育建築の秀作である。よって大規模建築部門 審査委員会奨励賞として相応しい作品である。

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