審査委員会奨励賞第7回サステナブル建築賞(大規模建築部門)
「ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター」
所在地 | 大阪府摂津市 |
構 造 | S造、一部SRC造 |
規 模 | 47,912m2 地上6F/塔屋2F/地下1F |
建築主 | ダイキン工業(株) |
設計者 | (株)日建設計 |
施工者 | (株)竹中工務店 |
講評
本建物は空調メーカーの主要工場内に技術開発拠点を建設したものである。研究・開発技術者約700名を1カ所に集約することにより、部門を超えた社内外とのコラボレーションによるイノベーション創出を目的としている。省エネルギー性と先端研究所としての快適性の両立を目指し、設計初期から空調メーカー技術者と建築意匠設計者、設備設計者が一体となり建設されたものである。また、竣工後も2020年度のZEB化を目標とした性能検証体制を確立し継続実施している。
ZEB化の一般的プロセスではまずパッシブ手法により建物自体の負荷を減らし、高効率機器などを採用することによるアクティブ手法によって負荷を効率よく処理して消費エネルギーを最小化し、最後に再生可能エネルギーによる消費エネルギーを打ち消す手法が一般的であるが、本建物は設計段階から設計者と建築主の空調メーカー研究者が協力し合いZEB実現を目指すものである。
採用されたアクティブ手法は、パッケージシステムでの自然換気・外気冷房・ハイブリッド空調・新型気泡発生型水噴霧装置、地中熱を熱源水利用した水冷パッケージ、太陽追尾太陽光発電システム、自然採光と日射遮蔽の両立した外観等である。この建物は、空調メーカーの建築主となって建設されたものであり、利用者である研究者にもBEMSデータを開放し、彼ら自身も性能検証に参画し、検証のスピードを飛躍的に加速させている。また、ここで得た知見をヒントに省エネ機器の開発に反映させ地球規模に低酸素化を目指す機器開発にも役立っている。
室内環境やエネルギー評価は、一定期間のデータを収集後に評価されるのが一般的であるが、リアルタイム性を重視し、エネルギー分析において、標準ビル、設計時想定した理論ビル、実測の3つのエネルギーを随時見える化している。この建物の優れている点は、市販の機器もしくは市販予定の機器を基本的に使用し高度な省エネルギー性能を実現していることであり、また、安易に総エネルギーを増やすことではなく運用改善により2020年にZEBを目指している点である。ここで開発された機器は地球規模で採用される可能性があり、単体の建物での省エネ化という枠を超え影響力のある優れた建物である。