国土交通大臣賞第8回サステナブル建築賞(大規模建築部門)
「阿南市新庁舎」
所在地 | 徳島県阿南市 |
構 造 | S造、一部RC造(免振構造) |
規 模 | 延床面積20,704.24m2 地上7階/地下1階 |
建築主 | 阿南市 |
設計者 | (株)日建設計 |
施工者 | 大成建設(株)/(株)朝日工業社/東光電気工事(株)/(株)四電工 |
講評
この建物は、1966年以来50年にわたり阿南市政に使用されてきた旧庁舎の建て替えのために設計された。2013年から4年にわたる工期を経て2017年に完成した。市民・議会・行政の協働性がシンボルとして現れるような形が特徴的な姿の建物である。建物全体の熱取得・熱損失を徹底して低減化し、そのことで、身近な自然資源―光と風―を十分に活用できるよう工夫を凝らした作品である。
以下、評価された主たる特徴を記す。
- ソーラーボイドと称する大きなガラス空間が低層棟と高層棟をつなぐように立ち上がっており、この空間は温度差換気に用いられる。
- アトリウム空間が縦横に大きく広がる形態が特徴的で、床材(コンクリート研ぎ出し仕上げ)、壁表面・天井仕上げ材(県産杉材)の組み合わせは、空間の大きさにもかかわらず威圧感を覚えさせないよう設計されている。
- 春・夏・秋は、自然換気 ⇒ 自然換気+天井扇 ⇒ 天井扇+空調という3段階モードで室内環境を形成できるよう設えられている。
- 天井扇は1台当たり最大投入電力20Wで(1W/m2(床面積)程度)、強中弱の3段階切り替えが可能となっており、室内気流速は弱で0.3m/s程度、強で0.8~1.0m/sとなる。事務所スペースの壁面に区域ごとのスイッチボードが設けられており、区域ごとに居住者の好みを反映できるようにしてある。これにより、特に夏季に高めの室内空気温を可能にしていることが実測によって裏付けられている。
- ソーラーボイドによる温度差換気と天井扇の組み合わせは、居住者の満足度を高めるのに大いに効果的なことが竣工後の調査で明らかにされている。
- 電灯照明は細長いLEDランプ器具を正方形状に構成して、正方形の中心に天井扇を設置。天井扇が作動しても、光のちらつきが生じないよう工夫されている。この効果は天井扇の使用頻度を向上させている。
- 吹き抜き空間の屋根部は、太陽光パネル+鉄骨構造材(+断熱材)+木質仕上げ材の三層構造。このため、天井表面温度は上がりにくいようになっている。
- 各階の周壁部分には換気用の開口があり、外気が取り入れられる。夏季に行なわれた実測結果によるとソーラーボイドと各階換気用開口の組み合わせで約10回/hの換気回数という顕著な結果を得ている。
- 年間エネルギー使用量は550 MJ/(m2年)であり、一般の事務所建築の半分ほどになっている。
- この建物は市民(子供たち)向け環境教育にも活用されている(建物の省エネルギー技術紹介や屋上空間利用の菜園など)。