建築環境・省エネルギー機構理事長賞第8回サステナブル建築賞(大規模建築部門)
「女神の森セントラルガーデン」
所在地 | 山梨県北杜市 |
構 造 | S造、一部RC造 |
規 模 | 延床面積5,385.13m2 地上2階/地下1階 |
建築主 | (株)AOB慧央グループ |
設計者 | (株)竹中工務店 |
施工者 | (株)竹中工務店 |
講評
本施設は緑豊かな八ヶ岳と南アルプスの山間に佇む森の中の集会場であり、ホール、研修室、多目的ホールを2棟に分けて配置し、また2棟の間の屋外通路(回廊)にもホワイエの機能を持たせている。さらに傾斜地に1階レベルを揃えて建設し、地域内外から訪れた人々が建築空間を通して樹木の色々なレベルを体験できるなど、豊かな風土を体験できる施設としている。
本施設では、分棟配置と卓越風に従った適切な開口部の配置により、冷涼な夏と中間期に自然換気、外気冷房を可能である。一方で、分棟配置による建物表面積の増大、寒冷地での暖房負荷という課題は、2つの棟の間の回廊をホワイエとして活用することにより建物面積を減らし、窓をうまく配置して室内外のつながりを十分に確保しながら窓面積を減らすという建築的な工夫、また十分な断熱によって解決している。さらにペリメータヒータを適正に配置することにより蓄熱負荷を回避し装置容量が適正化にも配慮している。また、つらら対策として屋根の先端見附を最小にし、安全性を向上しつつ寒冷地の施設で大きなエネルギー消費量を占める解氷のヒーターエネルギー消費を削減している。
本施設では、また地域に根付く自然エネルギーの積極的な活用を目指し、木質ペレットを吸収冷温水発生器とボイラーに利用し、そしてこれらの出力制御特性を十分に把握し負荷との対応を設定し運転している。また、地中コイルによる採熱を行い、空調機の予冷・予熱コイルへ直接利用している。この地中熱採熱システムは十分に高いCOPを確保できており、地中熱利用と木質ペレットを合わせて年間製造熱量のうち約38%を賄うことができている。そして、上記の建築的、設備的な手法により、本施設ではZEBreadyを達成しており、特に冬期の熱源運転のチューニングをすることによるさらなるエネルギー消費量の削減を検討している。
さらに、地域に根差した施設づくりとして、生物多様性と緑を守るための地域植生によるランドスケープを実現するために、施設の計画に際して既存植生の分布を丹念に調査し、アカマツ主体の針葉樹林から豊かな生態系を育む落葉広葉樹林への緩やかな転換を図り原風景への回帰を促している。そしてこれらの作業においては地域住民の参加により、開発事業者とともに自然への関心と知見を深めた。
上記のように建物用途、地域を十分に読み解いた建築的、設備的手法と地域住民との連携で施設を作り育てるという点から、サステナブル建築賞にふさわしいと考えられる。