審査委員会奨励賞第8回サステナブル建築賞(大規模建築部門)
「赤坂インターシティAIR」
所在地 | 東京都港区 |
構 造 | S造、SRC造、一部RC造 |
規 模 | 延床面積178,328.01m2 地上38階/塔屋1階/地下3階 |
建築主 | 赤坂一丁目地区市街地再開発組合/日鉄興和不動産(株) |
設計者 | (株)日本設計 |
施工者 | (株)大林組 |
講評
赤坂インターシティAIRは延床面積約18万m2の超高層建築(複合用途)を含む第一種市街地再開発事業である。この事業・建築には大きく4つの優れた特徴がある。まず、(1)周辺地域と連携した緑のネットワークを構築し、自然樹林に倣った植栽計画と保全に基づいた憩いの緑空間を実現している。都心のオアシスの形成やヒートアイランド現象の緩和に貢献している。次に、(2)隣接する既存の地域冷暖房(DHC)プラントとの熱融通(冷水・蒸気)を行っており、超高層建築の高効率な熱源システムが周囲地区の建築の省エネ化にも寄与している。既存DHCを拡張したこのエネルギー面的利用は、コージェネレーションシステムや非常用発電機の導入と共に、周囲地区も含めた事業継続計画(BCP)の格段の向上につながっている。さらに、(3)超高層建築に構築された高機能省エネ型の空調システムには工夫された点が多い。既存の設計手法に捉われない合理的な負荷計算と機器選定によるコンパクト化、原理や経験に基づく徹底した省エネ化、テナントニーズに柔軟に対応する機能分化を総合的に実現している。給気ファン動力削減のための超大温度差送風や変風量0-100%制御、無駄な外気負荷を生じさせない外調機シェアリング外気量制御、排気ファン動力を削減するユニットトイレライニング排気システムなど、見切りの効いた様々な省エネ手法が盛り込まれている。また、窓側個室対応可能なペリメータ、大部屋主体のインテリア、コア側個室対応可能なコアサイドという3つのゾーンを設定し、冷風・温風の風量の組み合わせで温度調節を行うマルチダクト方式によってテナントニーズに柔軟に対応することが可能になっている。最後に、(4)竣工直後から運用段階のコミッショニングを実施し、チューニングや運用改善を通して設計目標である44%のエネルギー削減率を実績値で確認している。
サステナブル建築には多様な観点があるが、エネルギーを多消費し業務機能が集中する都心の超高層建築では、室内環境のクオリティはもちろんのこと、省エネやBCPも非常に強く求められる。これらは往々にして共立できていないことが多いが、既存DHC拡張型の熱融通をはじめ、合理性を追求したテナントファーストな空調設計や柔軟な発想と判断に基づいた空調制御によって、これらの課題を高いレベルで解決している。特に超高層建築で大幅な省エネを実現していることは注目に値する。今後の超高層建築における環境・設備設計の手本にもなる優れた作品である。