IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞第1回SDGs建築賞(大規模建築部門)

「早稲田大学37号館 早稲田アリーナ」

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所在地 東京都新宿区
構 造 SRC造・S造・RC造
規 模 延床面積 14,028.37m2 地上4階/地下2階
建築主 学校法人早稲田大学
設計者 山下設計・清水建設共同企業体/㈱プレイスメディア
施工者 清水建設㈱

講評

 「早稲田大学37号館 早稲田アリーナ」は、スポーツアリーナを中心にラーニングコモンなどを内包する地上4階、地下2階の約14,000m2の複合施設で、全体を半分地下に埋めて地中熱を利用した省エネルギーを実現し、屋上部分を緑化して豊かな外部空間を創出している建築である。戸山キャンパスの再開発として長い時間をかけて企画を検討してきた結果、学生だけでなく地域にとっての場の形成も考えたコンセプトになっており、その多くがSDGsのゴールが目指すところと合致している。具体的には、ゴール4に関連してバイオフィリックデザインによるキャンパスの知的創造性の向上、ゴール5に関連してユニバーサルデザインの推進、LGBT対応、ゴール11に関連して地域・社会との連携強化、ゴール13に関連してZEB Readyの実現、ゴール15に関連して第二の大地「戸山の丘」による生物資源・自然環境の保全といったことが、示されている。これらのコンセプトにしたがって、設計者と施主である大学側がしっかりと考え方を共有して、進められたプロジェクトになっている。
 省エネルギーについては、地下に埋めたことで断熱性を高め、地中熱を利用していることが特徴であり、そのうえでモニタリングも行い、実績値として高いレベルの省エネルギーを実現している。建物使用開始時には、利用者の温度設定などによって想定以上のエネルギー使用量になったこともあったが、原因を突き止めて使用ルールをあらため、改善している。大学の利用状況を把握した上での設計と、その後のモニタリングおよび利用方法の改善をしっかり行っていた。
 屋上のデザインについては、緑化された外部空間および隣接するカフェなどによって、学生の憩いの場として利用するだけでなく、地域にも開放されている。緑については、近辺の戸山公園や早稲田のメインキャンパス等の植生との関係を意識して計画されている。
 以上のように、大学の体育館と交流の場の施設として、省エネだけでなく学生や地域の住民に対して快適な空間を創出することに成功しており、本プロジェクトで実現した建築とその後の運用が、SDGsの幅広い項目と合致していたことを高く評価した。

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