住宅・建築SDGs推進センター理事長賞第1回SDGs建築賞(大規模建築部門)
「トヨタ紡織グローバル本社」
所在地 | 愛知県刈谷市 |
構 造 | S造 |
規 模 | 延床面積 13,119.16m2 地上7階/塔屋1階 |
建築主 | トヨタ紡織㈱ |
設計者 | ㈱竹中工務店 |
施工者 | ㈱竹中工務店 |
講評
本施設では、敷地内に土地の記憶を引き継ぐ記念樹、保存樹を中心とした「刈谷の杜」を整備し、セキュリティラインを敷地境界ではなく、建物内に計画することで、敷地そのものがまちに開かれた計画である。敷地内に設置されていた大正時代のボイラー棟は外壁を補修・復元し、また木材トラス構造で屋根を支え、歴史未来館として社内研修の他、地域にも公開した施設としている。
本施設の1Fエントランスホールの屋上は緑化し、傾斜し南東に開く緑化面から入射するハイサイドライトから採光。この緑化した屋上の景観は2Fミーティングゾーン、屋外テラス席に憩いとうるおいをもたらしている。ハイサイドライトの採光は1Fエントランスホールの天井に吊るしたファブリックスクリーンを通し拡散光をもたらす一方、雨水を利用した水盤に反射する光が南面窓から差し込み、天井のファブリックスクリーンに写り込むことで、自然の揺らぎが感じられる明るい空間を形作っている。
オフィスの南面ファサードは眺望を確保しながら日射負荷、採光をコントロールするため、糸を紡いだ形状のスクリーンを設置し、特徴的な建物外観を形成している。執務室では生体リズムに合わせて照明を調光・調色するウェルネス制御や、天井面のしみだしパンチングパネルを通した放射空調、床吹き出し空調を導入し、知的生産性の向上と健康増進を図り、SAPアンケートなどにより移転前後の効果を確認している。また太陽光・蓄電池エネルギーマネージメントシステムを導入し、過去の負荷データ、現在の消費電力、天気から負荷を予測し、太陽光、消費電力を基に蓄電池の充電・放電の運転を決定、さらに照明、空調で2段階のデマンド制御を行っている。
BEIは計画時にZEB Readyである0.36を達成しているが、BELS認証時と2021年度実績との比較を行いながら、対策毎の効果検証とチューニングを実施している。この結果、BEIは2021年度実績値で0.35を達成し、更に増設して142kWとなる太陽光発電の効果を加えると2022年度のBEIは0.25となり、実績値Nearly ZEBを達成見込みとのこと。
計画段階からトライアルオフィスの実施や効果測定を通じて、「いつでもどこでも誰とでも働ける環境の構築」を目指し、オフィスフロアではフリーアドレスでありながら、連携しやすい部署の配置、年2回の働き方アンケートなどで改善を図るなど、運用面での取り組みも感じられ、SDGs建築賞(一財)住宅・建築SDGs推進センター 理事長賞にふさわしいと考える。