IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

住宅・建築SDGs推進センター理事長賞第1回SDGs建築賞(中・小規模建築部門)

「morinos」

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所在地 岐阜県美濃市
構 造 木造
規 模 延床面積 129.04m2 地上1階
建築主 岐阜県立森林文化アカデミー
設計者 岐阜県立森林文化アカデミー/㈱三宅設計/㈱ダイナ建築設計
施工者 澤崎建設㈱

講評

 この建築は、「すべての人を森とつなぐ」を掲げ、広く一般の方々に森林についての興味を持ってもらい、理解を深めてもらうための施設である。その活動は、子ども向けの遊びのプログラムから大人向けのワークショップや講座、研修など、多岐にわたっている。その結果、子どもが平日の夕方に学童的に利用したり、休日には親子連れが訪れたりするなど、コロナ禍でありながら年間1.2万人という多くの利用者数につながっている。地域に根ざした施設として確実に成果を残している様がうかがえよう。
 建築的には前面の軒下空間に設置された屋根を支えるV字型のヒノキの丸太材が目を引くが、他にも樹皮付きの木製建具の方立、集成材、天井を構成するCLT材など、多種多様の木材活用の試みがなされている。森林文化アカデミーの木工コースと連携して、樹種を違えた家具も装備され、来訪者にさりげなく木材活用の多様さを伝えていく工夫がなされている。
 環境設備面では床下空調が提案されている程度で特に高度な技術が適用されているわけではないが、トリプルガラスの採用、セルロースファイバーによる高断熱化など基本的な建物性能を確保した上で、南面の大きな開口からのダイレクトゲインなど恵まれた自然環境を活かすことで、実績ベースで大きくエネルギー消費を削減している。積極的な屋外活動を促す施設としては、周囲との関係を閉じるのではなく、開かれた環境制御が目指されるべきであろう。敷地状況、建物の使われ方を勘案した的確な環境設備計画といえよう。
 さらに、森林文化アカデミーの教育プログラムとも連動し、木材活用のための技術を伝えていくことにも注力され、幅広い専門家の交流・協働の場ともなっている。そもそもSDGsの理念は単なる環境配慮にとどまらず幅広く奥深いものであるが、このプロジェクトは、ハードとしての建築だけでなく、施設の企画、活動を含めて、幅広いSDGsの理念を具現化している。SDGs建築賞にふさわしい建築として高く評価するものである。

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