IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査委員会奨励賞第1回SDGs建築賞(大規模建築部門)

「垂井町役場」

作品紹介はこちら

所在地 岐阜県不破郡
構 造 RC造、一部S造
規 模 延床面積 7,434.66m2 地上2階
建築主 垂井町
設計者 ㈱梓設計
施工者 TSUCHIYA㈱/内藤建設㈱

講評

 低層大平面の商業施設のリニューアルは多くあるが、町役場としてコンバージョンする事例は少ない。
 本施設は、多くの関係者の不安を払しょくし、閉店した商業施設を格調ある行政中心施設に生まれ変わらせた建物である。大平面の利点を生かし、欠点を改修に寄り取り除くことで、生産性に優れ、町民に開かれた役場に生まれ変わらせている。以下に評価された主たる特徴を記す。
1)奥行きが深く開口部が少ない既存建物内部に、環境井戸と命名されたトップライト付き吹き抜け空間を貫入し、光と風を取り入れることで、開放感の高い交流スペースを形成している。
2)役所職員の執務スペースを廊下で分断せず、集約させることでコミュニケーションの活性化を図っている。
3)ゆとりのある平面を利用し、従来は蔑ろにされがちな職員のための休憩スペースや交流スペースを潤沢に確保しており、職員の高い満足度を得るとともに、新しい雇用創出への効果も期待できる。
4)既存建物にアウトフレームを増設したことで、建物周りに緑に囲まれた通路スペースが形成され、イベントや交流の場になるとともに雨天時の通路としても活躍している。また、耐震安全性を1.5倍向上させ、防災拠点としての安全性を確保するとともに、既存躯体の保護の役割も果たしている。
5)設計中の先行発注により、非流通材である町産材の内装利用を実現している。6)新築ではなく、改修を選択したことにより、建設時のCO2排出量62%減を実現している。
  近年、公務員や学校教員を目指す人が減っている。これはやりがいだけでは回らない、業務の重さに対して、待遇の整備が遅れていることも一因であると考えられる。本施設では来庁者へのサービスや交流の質向上はもちろんのこと、職員の生産性向上やリフレッシュにも力点を置いている点が、時勢に即している。SDGsの観点から建築を捉えた場合、環境配慮だけでなく、社会的側面への貢献も重要となる。本施設は、人口減少化にある町を活性化する新しい拠点として、防災面、賑わい面などからも町の課題解決に大いに貢献すると思われる。

戻るボタン