IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査委員会奨励賞第1回SDGs建築賞(中・小規模建築部門)

「ザイソウ正木ビル」

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所在地 愛知県名古屋市
構 造 木造
規 模 延床面積 493.39m2 地上3階
建築主 材惣DMBホールディングス
設計者 株式会社加藤設計
施工者 株式会社ザイソウハウス

講評

 都市部の3階建て、500m2程度の木造の小規模オフィスビルである。このような中小ビルでは、大規模建築のような大がかりな設備システムを導入することは難しいし、企業の研究所のように先進的な設備を実験的に入れることはできないだろう。しかし、ここでは汎用性のある技術、設備を用い、建設コストも抑えながら、無理なくZEBを実現しているところが特筆される。
  建築計画的にも、環境配慮のための特別なエレメントや新たな空間を付加するのではなく、オーソドックスな空間構成要素である階段室を使って熱環境の改善が図られており、その点でも一般的な中小ビルにも適用可能な提案となっている。
  構造的には純木造であり、床板等にCLTが用いられるなど、建設に関わる環境負荷の低減も目指されているが、ここでも一般流通材による在来軸組工法が採用され、他への援用可能性が強く意識されている。木材は国産材のみで構成されているわけではないようだが、それもまた現状では現実的な方向性なのかもしれない。
  デザイン的には立体的にL字型につながっていく庇が特徴的であり、一見すると木造とは思えないシャープな外観が作り出されている。内部空間においても3層にわたるCLT壁パネルの周囲を回りながら上がっていく階段室がユニークで、木造らしからぬ軽やかさで実現されている。デザインも手堅くまとめられ、環境設備、構造・工法を含めて、全般に熟度の高い建築といえよう。
  ZEBを実現するにはゆとりある敷地に低層建物というイメージがあるが、都市部においてこのようなプロトタイプとなり得るプロジェクトが出現してきたことは心強い。一般への波及効果という点が応募資料でも強調されていたが、まさにZEBの普及にとって重要な視点といえよう。マスヴォリュームとなりうる建物種別・規模での試み・成果は、脱炭素社会の実現にむけてのおおいなる励みとなろう。
  今回のこの受賞を機に、各地で同様の取り組みが増えてくることを期待したい。

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