IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞第2回SDGs建築賞(大規模建築部門)

「古平町複合施設かなえーる」

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所在地 北海道古平郡古平町
構 造 RC造、一部SRC造
規 模 延床面積 3,887.03m2 地上3階
建築主 古平町
設計者 大成建設㈱一級建築士事務所
施工者 大成建設㈱札幌支店

講評

 北海道は積丹半島東部中央の⽇本海側に位置する古平町の「古平町複合施設かなえーる」は、古くなった町役場と⽂化会館の⼆つの施設の機能をあわせた建築である。津波の浸⽔レベル以下だった旧役場からより安全な⾼台の敷地に移動し、地域コミュニティの中⼼施設かつ防災拠点となるよう整備された。北海道の⾃治体としてはじめて掲げた町のゼロカーボンシティ宣⾔にふさわしい建築にするため、北海道の公共施設ではじめてZEB Readyの認証も取得した、環境配慮建築である。建物正⾯から⼊ると階段のある吹き抜けがあり、その左側が庁舎機能で右側が交流機能となるホールや図書館と、誰にでもわかりやすい空間構成となっている。外観はガラスとコンクリートの壁柱で覆われ、4⽅向に多数の窓が設けられており、内部のどこにいても町の⾵景が⽬に⼊る開放的なつくりとなっている。⼀⽅北海道の気候から冬でも暖かい内部環境を実現するため、⾼い断熱性能を確保している。外壁と屋根は外断熱とし、コンクリートは蓄熱体として機能している。また内部に露出したコンクリート⾯には輻射冷暖房を設置し、快適な内部空間を実現している。エネルギー源としては、地中熱ヒートポンプを採⽤し、中間期には⼤きな換気窓を⽤いて外気を取り⼊れるなど、⾃然エネルギーも積極的に利⽤している。竣⼯後2年間は設計者がエネルギー等のモニタリングを⾏い、利⽤者とともに使い⽅を検討して、⾼いレベルの省エネを実現している。内部には、地産地消の観点から北海道産のカラマツを使った集成材等を利⽤し、室内側のコンクリート打ち放し⾯にも型枠にカラマツを採⽤して、⽊⽬が施されたやさしい仕上げとなっている。さらに和室では、その使⽤済み型枠でつくった天井ルーバーを再利⽤するなど、資源を⼤事にするという姿勢も建築として表現している。あらゆる年代の町⺠が利⽤することから、ユニバーサルデザインにも⼒を⼊れている。現地視察の当⽇は、⼩学⽣がユニバーサルデザインについて学ぶイベントも⾏われていた。またRC打ち放し壁のP コーンあとに地元の⼦供たちが描いた絵を埋め込むことで、⻑く愛着を持ってもらえるように⼯夫している。ホールや調理実習室などは、可動の間仕切りで様々なタイプの活動に対応できるようになっている。このように、町に開かれた交流施設として、冬でも快適な空間を確保する省エネ建築となっているだけでなく、地域材としての⽊材の利⽤や省資源にも積極的な設計となっていることや、防災拠点としても⾼い性能を有していること等から、SDGsの数多くのゴールを⽬指し、実現している建築となっていることを⾼く評価し、国⼟交通⼤⾂賞として選出した。

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