国土交通大臣賞 第2回SDGs建築賞(中・小規模建築部門)
「常盤工業株式会社本社事務所」
所在地 | 静岡県浜松市 |
構 造 | RC造 |
規 模 | 延床面積 1,771.04m2 地上2階 |
建築主 | 常盤工業㈱ |
設計者 | 常盤工業㈱一級建築士事務所 (設計協力:㈱日建設計) |
施工者 | 常盤工業㈱ |
講評
地⽅ゼネコンの本社ビルである。アトリウム状のエントランスを囲むように事務室が配置され、その上部では塔屋を利⽤した重⼒換気・採光が⾏われている。外周部にはバルコニーや緑のカーテンが巡らされ⽇射を制御し、環境を意識したベーシックな建築計画がなされている。設備計画という点から⾒ると、南側の倉庫棟の屋根にPV が設置され、井⽔を利⽤したHPや太陽熱集熱が装備されている。コンクリート熱容量の⼤きさを活かすために外断熱が採⽤され、放射冷暖房と組み合わせられ、快適な執務環境を実現している。先進的な機器・システムが導⼊されているわけではないが、建築計画とバランス良く組み合わせることで、BEI-0.03のZEBを達成している。バルコニー部分のヒートブリッジなど気になる部分が若⼲あるものの、概ね想定通りの性能が発揮されており、実績ベースでコンセント含めて⼀次エネルギー-94.5%を実現していることは⾼く評価される。執務室500m2ほどにスタッフ100名程度とそれなりに⼈の密度が⾼いが、現場での業務が多い勤務状況に応じて、無理・無駄なくフリーアドレスが実現されており、⼗分に機能しているさまがうかがえた。2層の低層オフィスとして、⼿堅く、しかし密度濃くまとめられたプロジェクトといえよう。さらにこのプロジェクトで特筆すべきは、建物⾃体を活⽤したZEB 普及への取り組みである。地元の⼩学校や地域住⺠、建築⼠会と連携し、種々のイベントを仕掛け、SDGsやZEB普及に⼤きな貢献をしている。実際に同様の性能を持つオフィスビルの受注につなげるなど、具体的な波及効果も現れはじめている。⾼度な技術を使わなくても、また過⼤なコストをかけなくても、丹念に設計・施⼯・運⽤を⾏えば、中⼩規模の建築でも⼤きな成果を上げられることを実証している。特筆すべきことといえよう。普及型の環境配慮建築として⾼く評価されるものである。