IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査委員会奨励賞第2回SDGs建築賞(大規模建築部門)

「嘉麻市庁舎」

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所在地 福岡県嘉麻市
構 造 RC造、一部S造(免震構造)
規 模 延床面積 9,652.99m2 地上6階
建築主 福岡県嘉麻市
設計者 ㈱久米設計 九州支社
施工者 ㈱淺沼組 九州支店

講評

 本建築は、2006年に1市3町が合併により誕⽣した嘉⿇市の新市庁舎として、2016年4⽉の熊本地震後九州で最初に公告されたプロポーザルにて建設されたものである。また、建設敷地は周囲が⼭林で囲まれた嘉穂盆地にあり、盆地特有の気候と⾵環境と、近くに流れる遠賀川の畔に位置している。上記条件の中、設計を固める上で設計者、施⼯者、学識経験者、市⺠、職員が施設計画に対し協議する「嘉⿇デザイン会議」を設け議論を重ねて設計を詰め、建築計画をまとめたものである。また、設計プロセスの中で地元の⼯芸家、職⼈、建築家などもこの会議に加え、市⺠に愛着が⽣まれるような施設が⽣まれるように⼼掛けたとのことである。このプロセスにより幅広く関係者の納得度が⾼い建築になったのではないかと考えられる。主な設計内容としては、構造計画は地震に対する対応として免震構造を採⽤するとともにアウトフレームのファサードデザインを採⽤することにより、合理性と省エネ(⽇射遮蔽)を両⽴させている。また、この市庁舎は正⽅形矩形のセンターにフロアボイドを設けているが、屋上まで敢えて到達させず、クランク形状のボイドとしている。これにより最上階に平⼟間形式の議場空間を造り出すことが可能となっている。省エネ対策として、嘉⿇市の盆地気候特性を活かし夜間に冷⽔を造り蓄熱する⾼効率熱源システムと外気条件により制御された⾃然調和型ペリメーターユニット、アウトフレームによる⽇射遮蔽、エコボイド等の採⽤により、ZEB Readyを実現している。また、熊本地震後の建物であるためBCP対策として、機動的に動きやすい防災対策諸室レイアウトとなっている。更に、地震対策の免震構造とともに昨今頻度が多くなった豪⾬対策として、建物FL の設定や遠賀川の氾濫時の対応等にも配慮している。建築資材に関しては、地産地消の⽊材の活⽤のみならず、コンクリートなど主要構造部の⼤部分の資材を50km圏内から調達しているとのことである。かなり広範に細部まで設計チャレンジをしているが、全体的にバランスが取れよくまとまった建築である。

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