審査委員会奨励賞第2回SDGs建築賞(大規模建築部門)
「エア・ウォーター健都」
所在地 | 大阪府摂津市 |
構 造 | S造 |
規 模 | 延床面積 4,741.23m2 地上4階 |
建築主 | エア・ウォーター㈱ |
設計者 | ㈱竹中工務店 |
施工者 | ㈱竹中工務店 |
講評
健都と呼ばれる健康・医療ゾーン内に建設された、ウェルネス技術を⼿がける企業のイノベーション拠点である。この建物で特徴的なのは、なんといってもスキップ状に連続していく内部空間であろう。単調に執務空間を積み重ねるのではなく、それぞれのエリアに特徴を持たせながら、変化に富んだ流動的な空間をつくり出し、スタッフや来訪者が動き回りたくなるようなオフィスを実現している。実際の歩⾏量等の検証は⾏われていないようだが、スタッフから⾃然と体を動かしているとの感想もあり、建築そのものを健康装置として捉える考え⽅に説得⼒が感じられた。また、それぞれのフロアが外部のテラスとつながっていることから、内部の空間構成が外周にも表出している。隣地と連携して緑地を設け、「裏」のない敷地となっているため、その特性を活かし、四周に対して変化に富んだ表情を持たせているのもあざやかである。結果として1Fのカフェが地域の⽅に積極的に利⽤されるなど、地域に根ざしているさまがうかがえた。良質な空間を提供することで、内部・外部の利⽤者に寄与する建築となっている。建築設備という観点では、ABWとそれに伴うバリエーションを持たせた空調ゾーニングが提案されている。太陽熱と地熱を活かした空調システム、⾬⽔浸透を⾏うレインガーデンなど種々の試みがなされ、CASBEEやBELSでの⾼評価につなげている。⼀⽅、現状では床⾯積に対する就業者数が少なく、提案されたABWと空調ゾーニングの効果を⼗分に評価できなかったのが惜しまれる。またウェアラブル端末を利⽤しての空調制御も、ワーカーの積極的な参加が不可⽋であるが、インセンティブに限界があり、今後の課題といえよう。建物全体にデモンストレーション的な意味合いがあり、現時点での評価が難しい部分があるものの、イノベーションを掲げ、挑戦し続けていく姿勢を評価したい。