審査委員会奨励賞第2回SDGs建築賞(大規模建築部門)
「立命館アジア太平洋大学 Green Commons」
所在地 | 大分県別府市 |
構 造 | S造、一部木造 |
規 模 | 延床面積 6,495.95m2 地上3階 |
建築主 | 学校法人立命館 |
設計者 | ㈱竹中工務店 |
施工者 | ㈱竹中工務店 |
講評
⼤学キャンパスの校舎棟である。教室部分がオーソドックスに鉄⾻造でできている⼀⽅で、その間に挟まれたコモンズと呼ばれる学⽣の交流のためのアトリウム状の空間は⽊造で作られている。思わず⾜を⽌めたくなるような柔らかな光に満ちた空間であり、その中に設えられた⼤階段もつい座りたくなる魅⼒的な場所となっている。防⽕規定から3,000m2以下に区画することが求められるなかで、両サイドの空間で防⽕区画を構成して、中央部を⽊造とした結果であるが、交流という⾏為に対応した空間に温かみを感じさせる⽊質材料が適⽤され、適材適所の合理的な構造形式・材料選定となっている。昨今、脱炭素という観点から、建設に関わるエネルギーやCO2排出量の削減につながる⽊造・⽊質材料が注⽬されるようになった。⾼層や⼤スパン架構など⽊材でどこまでできるかをチャレンジした事例が注⽬を集めるが、⼀⽅で広く普及していくことを考えれば、どのような形で⽊材を使うのが適しているのかを探っていくスタンスも⼤切なのではないか。そのような観点では、今後の準耐⽕⽊造の学校建築のモデルとならんとする本プロジェクトが⽊造⼤規模建築に⼀⽯を投じた功績は⼤きい。また⽊質材料を使うにあたっては⼤半を地域産材で調達し、構造材だけでなくカウンターやサイン・照明器具などにも地域の材料・技術を織り交ぜるなど、きめ細やかな⼯夫が施されている。加えて、学⽣を巻き込んでのワークショップや上棟式なども開催され、新校舎の建設を地域の⼀⼤イベントとして位置づけ、関係者を広く巻き込んでいる。これらの取り組みは、持続可能な地域の拠点作りにつながるものといえよう。このように建物を作ること⾃体が、SDGsの理念を実践する絶好の契機となることを⽰した点も⾒逃せない。発注・設計・施⼯者の努⼒に敬意を表したい。