審査委員会奨励賞第2回SDGs建築賞(大規模建築部門)
「サントリー天然水北アルプス信濃の森工場」
所在地 | 長野県大町市 |
構 造 | 工場棟:S造、PR棟:木造+RC造 |
規 模 | 延床面積 48,882.53m2 地上4階 |
建築主 | サントリープロダクツ㈱ 天然水北アルプス信濃の森工場 |
設計者 | ㈱竹中工務店 |
施工者 | ㈱竹中工務店 |
講評
本計画は⽔を製造する⼯場であるが、単なる⼯場にとどまらず、敷地内及び⽔源である周囲の⾃然に、⽔の⼤切さを⾃覚し、⽔を守る循環に共感できるための仕掛けを施し来場者の共感を得やすい計画とするとともに、再⽣可能エネルギーの積極利⽤等により実質的にCO2ゼロ⼯場を実現していることに特徴がある。世界的には⽔は極めて重要な資源である⼀⽅で、⽇本においては⽔資源が豊富であるため、普段の⽣活において⽔の⼤切さや循環の重要性について感じる機会は少ない。そうした中で、⽔を製造する本⼯場においては、敷地内に⽔の循環を模した回遊経路を設け、⾃然景観と建築物による連続的な体験を重ねることで、⻑期間にわたって⾃然で磨かれる天然⽔のストーリーへの共感を可能とする仕掛けが設けられており、ゴール6「安全な⽔とトイレを世界中に」へ⼤きく寄与する計画となっている。「⽔の⼤切さ」を体現する計画として、井⼾⽔のカスケード利⽤を⾏っている。これは、くみ上げた⽔を、製品・製造装置の洗浄⽔として使⽤し、⼀部を回収して⽣活⽤⽔に使⽤する。さらに剰余の⽔は雑⽔に利⽤することで、汲み上げ⽔量を最⼩限にするとともに、上⽔使⽤料ゼロを実現するものである。また、周辺地域の間伐材を活⽤したバイオマスボイラの採⽤、太陽光発電設備、地域の⽔⼒発電利⽤の電⼒の活⽤などにより、ゼロカーボン⼯場を実現している。さらに、間伐材は、内装材、家具、⽊チップ舗装などに活⽤されるとともに、施⼯において堀り採った苗についても敷地内への再植樹を⾏うなど、持続的な計画を強く意識したものとなっており、ゴール12「つくる責任つかう責任」やゴール12「陸の豊かさも守ろう」との関係性が深いものとなっている。本計画は、⼯場⾃体がSDGsとの関連が深いものではない⼀⽅で、敷地や周辺環境も含めた全体計画において、「⽔」や「循環」の⼤切さを伝えるものとなっており、この⼀貫性の⾯で⾼く評価したものである。