審査委員会奨励賞第2回SDGs建築賞(大規模建築部門)
「OKI本庄工場H1棟」
所在地 | 埼玉県本庄市 |
構 造 | S造 免震構造 |
規 模 | 延床面積 18,837.72m2 地上2階/塔屋1階 |
建築主 | 沖電気工業㈱ |
設計者 | 大成建設㈱一級建築士事務所(設計協力 慶應義塾大学 准教授 川久保 俊) |
施工者 | 大成建設㈱関東支店 |
講評
「OKI 本庄⼯場H1 棟」は、埼⽟県本庄市に建つ精密機器・部品の組み⽴て⼯場である。SDGs達成への貢献として、主には森林資源の活⽤推進によるサーキュラーエコノミーの形成、⼤規模な省エネルギー対策の導⼊があり、これらによりホールライフカーボンマイナスを⽬指している。森林サーキュラーエコノミーの形成には、⽊材を利⽤するだけでなく、利⽤した分を新たに植えていくことが⼤切である。本施設では屋根・耐震壁・バックマリオンや内装等に地域の⽊材を利⽤するだけでなく、近隣⾏政区や県と連携して、伐採した敷地で植林や森林整備を継続的に実施することにより、サーキュラーエコノミーの実現とともに地域経済の活性化、地域雇⽤の創出、⽣物多様性の保全、気候変動対策に貢献している。また、省エネルギー対策については、ZEF(Zero Energy Factory)という概念を⾃ら考案することで、⼯場施設における省エネ対策の推進を先導している。ZEF は建築物省エネ法の所管に組み込まれていない「⽣産エリアの空調、換気、照明」をその評価対象に組み込む概念で、本施設では建築物省エネ法のBEI が-0.33(133%削減)で『ZEB』を達成し、ZEFでは「Nearly ZEF」を達成している。この⼤規模な省エネルギーの達成においては、外⽪負荷の低減、⽣産エリアにおける⼯場の稼働状況に応じたAIによる室内環境制御の最適化、CFDを利⽤した室内環境のデジタルツインによるクラウドEMS によるチューニング、⼤規模な太陽光発電(481kW)の導⼊を実施している。太陽光発電については、竣⼯1年後にも倍増させ、今後の追加導⼊も⾒据えており、将来はライフサイクルカーボンマイナスを⽬指している。省エネ対策はブランディングとして実施されることも多く、本施設⾃体も⼤規模⽣産施設として国内初の『ZEB』認証を取得するという栄誉を獲得している。⼀⽅で、ZEFという新たな概念を⾃ら提唱し、⼤規模⽣産施設としてあるべき取組みの実現のために⾼い⽬標を設定し、その達成に向けた⾏動を継続している点は⾼く評価できる。その他にも従業員の快適性への配慮、地域と連携した企業活動の推進など、SDGs達成に貢献する多くの取組みの実施を評価し、審査委員会奨励賞として選出した。