IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査委員会奨励賞第2回SDGs建築賞(中・小規模建築部門)

「Toyota Technical Center Shimoyama 環境学習センター」

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所在地 愛知県豊田市
構 造 木造
規 模 延床面積 423.29m2 地上1階
建築主 トヨタ自動車㈱
設計者 ㈱竹中工務店
施工者 ㈱竹中工務店

講評

 本施設は、現地に残る⾥⼭を中⼼とする希少な⾃然環境をフィールドとした環境学習のための平屋建て、延床⾯積423m2の施設である。⽥んぼで地域の⼦供たちと環境学習するとともに、間伐材を利⽤した地域住⺠の炭焼きの維持、さらには⽣態系の保全につなげている。敷地は⼭林中に住宅地として整備されたエリアではあったが、戦後放置され、また敷地周辺は、⼈の⼿が⾏き届かなくなった⼈⼯林で、細い樹⽊が密在し暗い森となっていた。敷地周辺を含めた「やま」を、企業が研究所などの⽴地に伴い所有するにあたり、地域住⺠と協議し、敷地の⾥⼭を維持・保全して⾏くことで本施設が計画された。計画にあたり、敷地内の⼭林では健全性を取り戻すための間伐を⾏うため、その副産材である径20cm、⻑さ3m程度が主体の「細く・短い」間伐材を構造架構として⽊造⼤空間を形作っている。この「細く・短い」⽊材の個性を活かすため、製造⼯程を増やす集成材は使⽤せず、シンプルな製材過程からの利⽤を製材初期から計画に反映させている。構造架構では⼩さい⽊材を相持ち構造とすることで、その⽊材の浮遊感に包まれ、材料個性を感じられる学習空間を計画している。仕上材においてもシンプルな製材過程から無駄なく使う形を計画に反映し、節を嫌わず乱尺⼱も取り⼊れた⽊材として利⽤。さらに、製材にも向かない⼩径材をチップ化し合板にすることで耐候性・耐久性を向上させながら⽊材利⽤範囲を広げ地域材を使い切る計画としている。製材・加⼯にあたっては隣県の各務ヶ原を利⽤。BPI=0.70、BEI=0.87ではあるものの、⾕に沿った⾵の道に合わせた妻配置による⾵通しのよい計画で、⽊材の⾹りとともに、気持ちよく過ごせる。⾥⼭の継続的な保全の在り⽅にひとつの答えを⽰した事例でもあり、また使い道が限定される⼩径間伐材利⽤の可能性を⾼めた事例でもあるため、SDGs 建築賞審査委員会奨励賞にふさわしいと考える。

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