建築環境・省エネルギー機構理事長賞第2回サステナブル住宅賞
「B邸」
建築主 | 個人 |
設計者 | 室蘭工業大学鎌田紀彦研究室 (有)向山工務店 |
施工者 | (有)向山工務店 |
建設地 | 長野県辰野町 |
構造 | 木造 |
階数 | 2階建 |
延床面積 | 196m2 |
講評
築後130年たつ本棟造りの民家の部材をできる限り活用して元の架構を再生し、内部の建具や造作にも元の部材を多用している。一方、基礎は、外断熱のべた基礎とし、屋根、外周壁、開口部は、高断熱高気密仕様とし、建築全体のQ値1.599W/m2Kを実現している。これは、I 地域の水準を余裕を持って、満足するものである。入居後の、エネルギー消費資料や、室内環境に関する計測資料も整備されている。
元の本棟造りの民家は、居住性は悪く薄暗いものであった。居住性に関しては、高断熱高気密仕様としたことや、平面計画上の様々な配慮により、大幅に改善できている。薄暗さについては、棟まわりに越し屋根を設け、吹き抜けに高窓からの光を取り込むことによって克服している。吹き抜け空間に現れている再利用した梁材は、空間に豊かな印象をもたらすとともに、この住まいの歴史を今後に伝える象徴ともなっている。
外周の開口部は大きく設けられているが、ガラスは3重複層ガラスを用い空調負荷を抑制するとともに、内部空間を開放的で明るくしている。一方、内部の建具は、腰部分に鏡板を用いたものなど、元の住まいのものをできるだけ再使用している。全体として、再使用された部材と新しいものが面白く組み合わされた事例として、示唆に富んだものとなっている。
建て主は、この住宅の設計において部材の処理や機器の選定まで積極的に関わっているが、その前に、居住体験も含めいくつかの構法を検討したうえで、元の民家の部材の再使用を伴うこの構法の採用を決断しており、今後に向けて、この住宅の良さを活用しまた検証する意欲も旺盛である。こうしたことも、サステナビリティに優れた住宅の実現に大きく寄与しているものと考えられる。