IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

建築環境・省エネルギー機構理事長賞第3回サステナブル住宅賞(改修部門)

「仙台の家」

建築主個人
設計者豊田設計事務所
施工者(株)イノーバ
建設地宮城県仙台市
構造木造
階数2階建
延床面積102m2

講評

仙台市内で1982年に建設された中古住宅を購入し、徹底した断熱改修を行い、熱損失係数1.51W/(m2K)を達成するとともに、全室暖房とした4人家族が住む住宅である。改修にあたって十分な予備調査を行い、構造部分が再利用可能であることを確認した上で計画を開始し、布基礎であった床下に防湿シートと土間コンクリートを設け、さらに基礎の外側に断熱層を設けた上で外部を仕上げ、開口部の床下部分に温水パネルを設置し、上昇気流を床ガラリで1階室内に導くとともに、通気経路を巧みに配し、2階には暖房機器を設置しないで家全体を快適な空間にすることに成功している。暖房用灯油ボイラーとして、就寝時など低い室温でよい生活時間帯は停止できるものを設置し、無駄な放熱ロスを防ぐシステムとしており、夏期対策でも通気経路が活用され、3箇所に設けられた降雨センサー付トップライトおよび夜間換気用の1階に設置された大型換気扇により、ほとんどクーラーを使用しない生活を可能としている。1階南面には広い開口部を設け、冬期の日射熱を最大限利用し、熱ロス対策としては、ハニカム状の断熱スクリーンを設置している。外壁下地には構造用合板を設け、断熱材を正確に充填できるようにするとともに、耐震対策にも役立てている。
申請書類に居住後のデータが詳細に記載されており、「居住者の生活実感について」の記述に専門的な用語が見られることから、設計者自らが全て書類を作成したのではとの疑念をもって現地審査に向かったが、名刺交換をし、建築主が“誰でもが良質な住宅を求められる社会環境をめざして”をスローガンに活動しているNPO法人の常務理事であることを知り、その疑いは一掃された。さらに、申請書には記載されていない細かな工夫が数多くあることや、灯油使用量の毎日のデータ取りには奥様が協力されていることを知ることができ、また、設計者から“種々教えてもらいながら、設計料はきちんと払っていただきました”という言葉を聞くことができるなど、私にとって、楽しく、かつ極めて有意義な現地審査ができたことに感謝したい。

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