IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞第4回サステナブル住宅賞(改修部門)

「羽生の家」

建築主K様
設計者安井妙子あとりえ
施工者(株)阿部和工務店
建設地埼玉県羽生市
構造木造
階数2階建
延床面積229m2

講評

羽生の家は、東京近郊の田園地区(市街化調整区域)にあり、周辺を屋敷林に囲まれた築後130年余の農家を改修したものである。敷地面積3300m2、延べ床面積230m2の恵まれた住宅である。時代を経て様々な改修を経てきた農家を創建時の平面計画、意匠を残しつつ、十分な構造補強と高断熱高気密補強を行っている。12月中旬の穏やかな日に審査委員が視察に訪れているが、一面の乾田のなか屋敷林に囲まれた羽生の家は力強く調和した外観と伸びやかな内観、穏やかな室内の光と温熱環境を備えた上質な住空間を示していた。改修は、住宅の長寿命化、バリアフリー化に関しても十分配慮された改修となっているが、快適性と運用時の省エネルギーを計るための高断熱高気密補強とヒートポンプ利用を主体とした設備により、快適かつ省エネルギー的な住空間が実現されている。CASBEEすまい戸建評価(新築)はBEE=9.9、Sランクに評価される。
屋敷林に囲まれた重厚で力強い印象を与える住宅は、それだけで、居住者にこの様な住宅に住まう誇りと勇気を与える。その上、実測によりその省エネルギーと快適性を裏付けられたQ値1.6 W/m2程度の高い断熱気密性能、深い庇や屋敷林による日射調整機能、新たに設けられた天窓とハイサイドライトによる昼光利用、換気、通風計画など申し分ない。気になる点を敢えて挙げるとすれば、子供が独立した夫婦2人で住まうには、屋敷林、庭園、住宅の管理などいずれも一般の小規模な住宅に比べ極めて過大になることが挙げられよう。現在の住まい手は、住まい方の維持管理に極めて熱心であり、このような懸念は現時点では払拭されるが、将来は如何であろうか。住宅庇先直下はすべてコンクリートのたたきに雨水溝が配されていた。雨樋が伸びやかな庇の印象を損なっており、あるいは寺社建築のように雨樋は不要かとも現地視察した審査員は感じたが、降雨時の雨だれは激しく、雨樋は必須との説明であった。落葉樹による雨樋の清掃や屋敷林の高木の剪定が象徴する住宅の日常管理が今後、住まい手の大きな負担にならないことを祈る。

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