日本ツーバイフォー建築協会会長賞 第4回サステナブル住宅賞(新築部門)
「岩手・矢巾の家」
建築主 | O様 |
設計者 | (株)大共ホーム |
施工者 | (株)大共ホーム |
建設地 | 岩手県柴波郡矢巾町 |
構造 | 木造(枠組壁工法) |
階数 | 平屋建 |
延床面積 | 175m2 |
講評
岩手・矢巾の家は岩手県紫波郡(省エネ地域区分Ⅱ)に新築された親子3名のための2階建て木造住宅である。断熱性をはじめ建物外皮の基本性能を徹底的に高めることに重点を置いた上で、高効率な設備機器を導入、併せて住まい方による環境負荷削減、という方針を貫いている。
形態的にはシンプルな形状のほぼ総二階として容積に対しての外皮面積を抑えている他、窓はArガス入り2面Low-E処理のLow-E三層ガラス、サッシも中空層を有する木製サッシ、外壁はグラスウール、フェノール、EPSなど4種の断熱材を計約250mm用いており、天井は500mmグラスウール吹き込みなど、断熱水準は極めて高い。
また建物長手方向を南に正対させ、南面する開口は大きくしてより多くの日射を取得、その断熱性能を高め損失を抑えた上で、安定した温熱環境を形成するための熱容量は1,2階床のコンクリート部に負担させるなど、パッシブソーラー手法ダイレクトゲイン方式の忠実な反映を試みている。さらに、負荷の大きい給湯にはCO2冷媒ヒートポンプ式給湯器を用い、配管、貯湯タンクからの放熱も室内温熱環境形成に用いる計画となっている。夏期・中間期の効率的な日射遮蔽のために、厚い壁厚を活かして庇効果を得る目的で窓面を外壁面から160mm後退させた上で、電動オーニング用の電源も確保するなど、十分な備えをしつつ、結果としての過剰設備の回避を心掛けている。
加えて、床下防湿やメンテスペースの確保、外皮構造の内側に配線スペース層の確保、窓の交換のための取り付け方工夫、外装の塗り壁仕上げ採用、など将来に向けての配慮がなされている。
住まいながら工夫し実際の必要性を確認したもののみ取り込むという姿勢から設備的には完成形にはなっておらず、また応募時点では厳冬期は経験していないとのことだが、建築外皮が十分に基本性能を発揮し快適な室内環境が形成されるものと期待できる。