優秀賞第4回サステナブル住宅賞(新築部門)
「ライフサイクルCO2マイナス住宅亀山モデル」
建築主 | U様 |
設計者 | ミサワホーム(株) (株)ミサワホーム総合研究所 |
施工者 | ミサワホーム東海(株) |
建設地 | 三重県亀山市 |
構造 | 木造 |
階数 | 2階建 |
延床面積 | 138m2 |
講評
亀山モデルは、大手住宅メーカーミサワホームの実証住宅として建設したものを、実証期間終了後に現在の施主が住んでいるものである。最も重要なコンセプトは、ライフサイクルCO2をゼロまたはマイナスとすることを目指すということであり、住宅メーカーらしく高い断熱性能を備え、高性能な設備機器類を設置した住宅となっている。最大の特徴は通常3~5kW程度で十分な発電量となる太陽光発電を8.5kW搭載し、余剰電力分でCO2排出量をキャンセルしているという点である。そのため、南側屋根面は全面太陽光発電で覆われるという、現在のサステナブル住宅のある典型的な外観となっている。結果として簡易なCO2排出量の計算であるCASBEEの戸建標準計算によると、ライフサイクルCO2でゼロを理論上ほぼ実現している。
設備としては、空調にヒートポンプ冷温水システムとパネルルーバー輻射冷暖房、照明にはLEDなど、徹底して高効率のものが採用されている。また、太陽光発電に透過性のあるバックシートを採用して太陽熱集熱機能を設けたカスケードソーラーシステムも採用され、これら先進的な技術の積極的な採用が評価された。一方、日射遮蔽のためのブライドシャッターや通風の欄間建具、外構ではシステムパーゴラ、緑化ルーバー、吸放湿性のある溶岩ブロックと打ち水スプリンクラーを組み合わせたものなど、熱負荷低減の努力は認められるが、設備機器ほど評価は高くなかった。工場の廃棄物削減などの努力など、生産段階まで踏み込んで様々なCO2排出量削減に取り組んでいるところは、さすが大手住宅メーカーといえよう。
一方で、設計思想としてアクティブデザインとしては高レベルだが、パッシブ的な要素は少し弱く、結果として閉じた箱のデザインとなっていることは、少し残念に感じた。現時点での最高点に近い努力を行っているが、大手住宅メーカーとしては、今後のサステナブル住宅の様々な方向も検討していただきたい。