建築環境・省エネルギー機構理事長賞第5回サステナブル住宅賞(新築部門)
「オープンルーフのある家」
建築主 | 個人 |
設計者 | カサボン住環境設計(株) |
施工者 | (株)参創ハウテック |
建設地 | 東京都目黒区 |
構造 | 木造 |
階数 | 2階建 |
延床面積 | 138m2 |
講評
「オープンルーフのある家」の敷地は南北に長く、東と北で比較的交通量の多い道路に面した住宅街の一角となっている。海外生活の長い施主の希望は、陽当りの良いカーテンが不要な住まいであったが、南側に近接するアパートによって、プライバシーを守りつつ眺望を期待することは望むべくもなかった。そこで、寝室以外の空間を二階とし、二階南側端部に浴室・洗面所を配し、インナーテラスを介してリビング・ダイニングを配置する間取りとした。
このリビング・ダイニングをいかに施主の意向にあわせて作り込むかが設計上のテーマであったと思う。奥行きのある空間の陽当りを確保するため、3m2の天窓が採用された。Low-E複層ガラスであり、雨漏りなどを心配して嵌め殺しタイプの特注品としている。これによって採光と冬季のダイレクトゲインが確保されたが、夏季の日射遮蔽のためにアルミ箔コートのある断熱材入り電動扉が取り付けられ、タイマーのプログラムで開閉操作が行われる仕組みとなっている。また、インナーテラスの配置や、道路側の窓の開き方などについて、敷地の卓越風向を考慮した設計が行われるとともに、北側の通風窓は外からの視線が入らない配慮がなされている。インナーテラスに庇はなく、日射遮蔽にはインナーテラス上部に日射反射シートを、その季節の必要に応じて取り付けるアナログな対処法を採用することが予め取り決められていたようだ。
このような詳細の取りまとめに、光環境や温熱環境、気流環境の数値シミュレーションによるケーススタディを多数実施し、その結果に基づいて設計のつめを行っている点は評価したい。施主の要求が具体的で、設計者はそれに応える引き出しを持っていたため、都市型住宅でありながら、風、光の取り込みでうまくニーズに対応している。
CASBEE戸建-Sランク、Q値2.38W/m2Kの住宅のリビング・ダイニングはエアコン一台で環境調節が可能となり、二階を空調した空気を、一階個室がプライバシーを守りつつ取り入れる工夫が見られる。設備としては、高効率エアコン、潜熱回収ボイラー、断熱浴槽など高効率機器が採用されている。施主のニーズに対応しつつ省エネルギー性能が追求されており、何より施主が住宅を大変気に入っている様子が見て取れる。