ベターリビング理事長賞第5回サステナブル住宅賞(新築部門)
「アース・ブリックス」
建築主 | 個人 |
設計者 | (株)アトリエ・天工人 (有)EOSplus 佐藤淳構造設計事務所 |
施工者 | 小川共立建設(株) |
建設地 | 千葉県千葉市 |
構造 | 組積造・木造 |
階数 | 平屋建 |
延床面積 | 41m2 |
講評
この住宅の特徴は、土を構造体とした住宅である。焼いた土ではない。混ぜ物として海水から採取した酸化マグネシウムなどが添加されている、いわゆる日干し煉瓦である。設計者は言及していないが、この住宅は縄文や弥生時代全盛の竪穴式住居を思い出させる。古代人は高床式倉庫を建設する技術を持ちながら、日本では竪穴式住居に住んだ。竪穴は地中熱の有効利用により、冬の寒さや夏の暑さを、高床式倉庫を凌ぐ快適さを得たのであろう。竪穴式居住は平安時代ごろに姿を消していったことが知られている。どのような理由でこうした変化が起こり、今再び、竪穴式居住を強く連想させる住宅が建設されるのであろうか。こうした問いに対しては、様々な回答があり得よう。しかし実際この住宅に住んで、これを体感してその理由を考えることはいかにも面白いことのように思える。
構造体が土であることは、一般的に考えれば剛性や強度など制約が多く、建設や居住上の利点が多いとは思われない。土がリサイクルできる点でサステナビリティが強調され、土の熱容量が住居の快適性に寄与することが述べられているが、近代の建材や既往の技術に勝るとは思われない。ある意味、強弁に過ぎないと言われても仕方がないであろう。実現された居住の快適さや構造安全性に比して、大きな労力、費用が投じられたことは疑いないし、今後、こうした住居が日本に普及するとはなかなかに想像できない。極めて趣味性の高い住居である。しかしながら、茶室建築を思い出すまでもなく建物に高い趣味性を求めることは昔から行われている。住む人自身が建物設計のみならず、日干し煉瓦の作成という建材の製作からはじめて日干し煉瓦の積み上げという建設行為に文字通り深くかかわれば、建物に対する愛着はいかにも高く、住む人にとってのこの建物の価値は何物にも代えがたいほど高いものであろう。賞は、住む人の建物に対する愛着を強化する仕掛け、またこれに付随する新しい技術、可能性を開拓したことが評価されて贈られる。