優秀賞第5回サステナブル住宅賞(新築部門)
「FLAP」
建築主 | 個人 |
設計者 | 土井一秀建築設計事務所 |
施工者 | (有)アルフ |
建設地 | 広島県広島市 |
構造 | RC造 |
階数 | 3階建 |
延床面積 | 238m2 |
講評
広島市にある「FLAP」は、瀬戸内海沿岸の温暖な晴れの日の多い気候の地域で、南側が6車線ある広い道路に面した敷地に建てられている、3階建ての店舗併用住宅である。大通りに面しているので、1階を貸店舗として活用し、2階は大きく庇状に全面道路側、つまり南側に張り出して、より快適な空間が確保できる2階と3階に住宅の居室が設けられている。南側の広い道路のおかげで日射を遮るものが無く、南面する大屋根をつくることで、太陽を有効に活用している設計である。大屋根は、1/3が太陽をパッシブに利用するためのサンルーム、2/3がアクティブに利用するための太陽光発電となっており、豊富な日射を十分に活用している。この建物の特徴である2階の庇状のサンルームは、冬は日射を取り入れるための場所となり、夏には室内の吹き抜けとともに通風を行って冷房負荷削減にも活用される、環境を制御する装置となっている。それだけではなく、住宅と道路面からの眺めを遮って街路樹や空だけが見えるように視界を制御し、道路騒音に対しても2重サッシによって遮音性を向上させる効果があり、道路と住宅の間のバッファゾーンにもなっている。居室は外断熱で包まれており、ほとんど壁がなく、吹き抜けを介して一体となった快適な空間を確保している。各居室は間仕切り家具で仕切られており、将来の住まい方の変更に対応可能なプラニングとなっている。「CASBEE戸建-新築」の評価では、敷地にそれほど余裕がなく、緑化などの取り組みが少ないため、Q3およびLR3の値が低く、BEEはAランクにとどまっているが、ライフサイクルCO2については、大きな太陽光発電によって参照値に比べて8%しか排出しないという、LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅にきわめて近い値になっていることは、特筆すべき点である。
このように限られた条件の下で、敷地の特徴を最大限活かし、有利な点と不利な点をうまく使いこなして、快適な省エネルギー住宅に仕立てた好例である。