IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

硝子繊維協会会長賞第6回サステナブル住宅賞(新築部門)

「木漏れ日の家」

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建築主個人
設計者内田雄介設計室 一級建築士事務所
施工者(株)内田産業
建設地東京都稲城市
構造木造
階数2階建
延床面積132m2

講評

西に長い敷地の西側に眺望が開け、川と川向うの緑を望むことができる。しかし、南面には隣家が近接し、日射取得、採光に多くを期待できない。そこで、最も見晴らしの良い2階の西側にキッチンとダイニングが置くことにした。2枚のガラス戸引き込んで、大きく開け放てば、デッキとダイニングは内と外をつなぐ広い生活空間となる。この家の中心となるのがこのデッキテラスだ。四周が建物から大きく跳ねだし、周辺のノイズを除きながら、緑の風景を巧みに切り取っている。季節に応じて異なる風景を取り込みながら、多様に使われるのだろう。一方で2階の東端には、中央部の階段吹き抜けをはさんで、東向きの大きな開口部を有する居間を配置されている。これによって、東西の大きな開口部を軸にしたダイナミックで開放的なプランが成立している。一段と高い東のリビングからは吹き抜けやスキップした廊下を通してダイニングが見通せ、視覚的な一体感を強調すると同時に、夏の空気の流れにも配慮した形だ。南北壁面と屋根面に設けられたサイズ・形状の異なるさまざまな窓からは、1日の時間の経過とともに変化に富んだ光が差し込む仕組みだ。下階を壁勝ちの閉鎖的な空間とし、上階を窓勝ちの開放的な空間としている対比は、熱的な意味でも興味深い。
長寿命を期待し、120角の柱を用いた骨太の壁。ここと屋根には、十分な断熱材を充填し、窓にはLow-Eガラスを使用して断熱性を高めている。東西の大開口部に設けられた紙障子には断熱効果も期待できる。建物外皮をしっかり作りこんだうえで、内部の開放的な空間構成を意図した試み。敷地周辺の特徴を読み込み、西向きの良さを引き出すことに執心した工夫は成功しているように見える。
構造的にもシンプルなプランで、コンパクトで無駄のない空間構成だ。

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