IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

奨励賞第6回サステナブル住宅賞(新築部門)

「雨やどりの家」

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建築主個人
設計者(株) y+M design office
施工者(株)平田組
建設地鳥取県米子市
構造木造
階数2階建
延床面積115m2

講評

米子の高台に建つこの住宅は、大屋根により複数棟をひとつにまとめたような設計となっており、室内に居室と半屋外的な空間があらわれているのが特徴的である。敷地は西側に開けた高台で、景色はよいが、冬の冷たい北西風と夏の西日を防がなければならない。また、1年を通して雨が多く、多雪地帯でもある。この住宅には、夫婦と子ども二人、それと新たに同居する奥様の母親の5人が住む。そのため適度な家族間のプライバシーの確保をテーマとしている。とくに施主が夜勤のある生活のため、生活時間が異なっても睡眠できる環境の確保が必要となり、この分棟形式の設計となっている。
分棟形式の各部屋にとりかこまれたリビングに対して、住宅全体を通年の雨、冬の雪や北西風、夏の西日に対して守るように、地面から伸びる切り妻の大きな折板屋根をかけた設計となっている。各居室と屋根の間にはロフトのような空間が生み出され、リビングが居室に対して半屋外のような印象となっている。屋根は南側と西側に大きく張り出し、夏は日射を遮り、通風を確保できるが、冬にはリビングに日射が差し込むように調整されている。リビングのモルタル床はテラスと同じ素材で、各部屋に対して外部と一体となった土間空間のようなイメージをつくりつつ、冬季は日射によるダイレクトゲインを実現するための蓄熱体となって、やわらかな温度変化と省エネルギーに寄与している。
分棟形式の各居室は、それぞれ特徴的な内部空間となっており、異なるライフスタイルの家族が同居することを可能にしている。またそれぞれ独立性が高いので、母親の部屋を子ども部屋に変更するなど、将来にわたって部屋の利用方法を変更しやすく、家族のライフステージへの対応力もあるつくりとなっている。
このように、大屋根が複数棟を覆うという構成が、家族のライフスタイルと一致して、かつ、室内環境の制御に明快な手法であり、快適さ、豊かさを生み出す新しい発想の住宅であることを評価した。

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