板硝子協会会長賞第7回サステナブル住宅賞(新築部門)
「MEP(Masahide EightGrid Passive house)」
建設地 | 埼玉県飯能市 |
設計者 | 南雄三/(株)杉坂建築事務所 |
施工者 | (株)杉坂建築事務所 |
延べ面積 | 98m2 |
地上階/地下階 | 2/0 |
構造 | 木造 |
講評
飯能市の加藤邸は「MEP」と題され、前回の本賞改修部門で国土交通大臣賞を受賞した「KIP」と同じチームでつくられた新築住宅である。施主は今回も木製建具製作会社につとめており、パッシブに寄与する建具も独自に製作されている。そのコンセプトは、昔ながらの家づくりの考え方をいかし、8畳グリッドの小さなユニットを配置してつなげられた間取りで、これらが1,2階とも南側に面する縁側によってつなげられており、東西に細長い全体構成となって、南側に庭を確保することができている。大きな外壁面はパッシブの考え方を導入しやすく、南側は縁側から日射を取り入れ、北側には出窓を設けてひと部屋の狭さを感じさせないよう広がりを持たせるとともに、出窓をウインドキャッチャーとすることで通風を行っている。
外張り断熱を行って高い断熱性能を有するだけでなく、多くの建具で様々な室内環境のコントロールができるようになっている。夏にはスダレを使ったり、ハニカムスクリーンを活用するなど、建具以外のものとも組み合わせている。通風については、就寝時や留守でも適切な通風が行えるよう、防犯性能を確保した建具を製作し取り付けている。冬は晴れる日が多い立地のため、日射を積極的に取り入れるが、晴れていない日は1階床下のエアコンを用いて暖気を家全体に回すようにして、効率のよい暖房を行っている。
パッシブデザインとしては、2階の日射が豊富で冬場より暖かいため、過ごす時間の長い茶の間や書斎を2階に、少し温度の低くてもいい寝室や水回りを1階としている。また、縁側や使用頻度の低い結いの間を緩衝帯として、使用頻度の高い個室の空間をより高い断熱性能としている点など、生活空間と求められる性能を適切に組み合わせた設計といえよう。
将来の使い方の変化や増改築も視野に入れて、在来の作り方にこだわっている点も特徴である。その中で計画的な観点だけでなく、環境性能を組み合わせて、変化へ対応可能な丁寧な設計なっているところがすぐれており、これからの設計として参考とすべき考え方の多い住宅だと感じた。