日本木造住宅産業協会会長賞第8回サステナブル住宅賞(新築部門)
「玄杢舎」
建築主 | 個人 |
設計者 | (株)藤城建設 川内 玄太 |
施工者 | (株)藤城建設 |
建設地 | 北海道札幌市 |
構造 | 戸建・木造 |
階数 | 1/0(地上/地下) |
延床面積 | 83m2 |
講評
本住宅は、北海道札幌市に建つ、小ぶりの木造平屋住宅である。ご夫婦とお子様1人が居住されている。木が活かされた内外装は居住者に安らぎを与える優れたデザインになっている。土間、リビングに面して大きな開口があり、充分に昼光を導入できるように計画されている。UA値(外皮平均熱貫流率)は0.19W/(m2・K)と大変優れている。土間や基礎の断熱もきちんと行われている。また、開口部にはトリプル木製サッシ(一部トリプル樹脂サッシ)が採用されている。ガラスにもトリプルLow-eが採用されており、1W/(m2・K)を切る製品の採用も行われている。省エネ性能もBEIが0.54となっている。通常よりかなり高い断熱性能であるが、それでも日射が有効に利用出来ないときにはハニカムサーモスクリーンで熱損失を防止する工夫を行っている。また、夏のオーバーヒート対策にも使用されている。南東の角に土間を設け、住宅全体の熱容量を向上させている。これをチセ(イングルヌック)と呼び薪ストーブの熱、床暖房の熱を有効に蓄熱している。暖房は床暖房用の灯油ボイラーと薪ストーブであるが、これだけ断熱すると薪ストーブ朝一回焚きで充分暖房ができていると居住者は述べている。非常にシンプルであるが、断熱性能を飛躍的に向上させた結果得られる恩恵である。
周囲の方々からもこの住宅が、愛されているという居住者の言葉は心に響くものがある。省エネ住宅は機械設備のみに頼る「メカメカ」したものではなく、シンプルに外皮性能を向上させて対応すれば成り立つと言うことを教えてくれる作品である。使用されている建材も無垢材にこだわることにより健康的な生活が営めている。木造住宅としての価値も高い。平面計画も回廊型を採用しており、家族の暖かい生活に貢献するだろう。