IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

硝子繊維協会会長賞第8回サステナブル住宅賞(新築部門)

「コヤトヤネ」

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撮影:笹の倉舎/笹倉洋平

建築主 個人
設計者 (株)y+M design office 三宅 正浩
施工者 センコー産業(株) 原田 幸男
建設地 香川県丸亀市
構造 戸建・木造
階数 2/0(地上/地下)
延床面積 126m2

講評

本入賞住宅は、香川県丸亀市の豊かな自然の残る郊外に建設された2階建て住宅である。周辺の住宅の殆どは瓦屋根の和風建築であるが、この住宅はそれらとは対照的にメタリックなガルバリウム波板で外皮全面を仕上げている。このため、外に対してやや閉鎖的なイメージの外観である。しかし、内観は対照的に明るく、開放的な印象である。この理由として、天井高5m以上の大空間に多数のトップライトや南面のインナーテラスを設置することにより十分な開口面積を確保すると共に、取り入れた光が室内の隅々まで行き渡るように内装は白色系を基調に仕上げられているためである。また閉鎖的な印象の外皮(ヤネ)の内側には、プライバシーが重視される個室としての小屋(コヤ)が北寄りに設けられており、入れ子構造となっている。この外皮と小屋の間に存在するバッファー的な空間がこの住宅の特徴的な空間であり、LDKやロフトの用途として提案されている。この空間では、トップライトやインナーテラスを経由して、四季や天気、一日の時間を移り変わりを感じ取ることができる親自然的な空間であるため、特に開口部の各種環境性能を可変とすることにより、季節や日単位の屋外環境の変化に対応したパッシブな環境制御が可能となる。これにより暖冷房や照明のエネルギー消費量を削減できる可能性を有しており、独創的且つ先導的な提案として評価できる。また外皮の断熱性能はHEAT20のG1レベル(UA=0.4W/ m2・K)であり、断熱材にはリサイクルペット樹脂を再繊維化したものが使用されている。この断熱材は透過性があるため、トップライトからの光はこの断熱材を透過して取り入れるというユニークな試みもなされている。
「CASBEE戸建-新築2018」を用いた評価によると、BEE=1.6のAランクとやや控えめな評価となっている。大項目レベルでは特にLR1の省エネ性能が低く、まだまだ伸びしろがあると言える。この点は改修時における対応等、今後の更なる取り組みに期待したい。

 

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