国土交通大臣賞第9回サステナブル住宅賞
「都賀の家」
建築主 | 個人 |
設計者 | 株式会社日本設計 三好 礼益 須藤建設株式会社 松田 和己 |
施工者 | 須藤建設株式会社 |
建設地 | 千葉県千葉市 |
構造 | 戸建・木造 |
階数 | 2F |
延床面積 | 128㎡ |
講評
対象作品は、千葉県千葉市の閑静な住宅街に建設された2階建ての戸建て住宅である。緑が量的に限られる市街地という敷地条件の下でも、敷地の周りに残る自然を丁寧に読み込み、敷地の緑とまちの緑を重ねて暮らしの中に取り入れることを意識した設計とすることで、人とまちを潤す四季折々の風景をつくるランドスケープと建築の融合を目指した郊外型住宅の提案となる。敷地内の植栽は「雑木の庭とまちの盆栽」の創出をテーマに、樹齢30年の枝垂れ梅を含め多種多様な植生を取り入れており、住み手のみならず、まちの人々が四季を感じられることを意識した計画としている。住宅の開口は、室内の主要な滞在位置から敷地周辺の植栽や雑木林へ視線を向けるよう配置されており、市街地においても豊かな自然を感じられる工夫が施されている。
環境性能としては、CASBEEはSランク、UA値0.36 W/(m2K)、BEI 0.41と高い性能を示す。特に断熱に関しては、HEAT-20 G2グレードを満たすよう、首都圏としては顕著な性能を示しており、冬期における暖房使用時間の低減に寄与している。加えて、吹き抜け空間を利用した自然換気計画により、中間期から夏期にかけて外気が心地よい時間帯における冷房使用を抑制しており、冷暖房起因のエネルギー使用量の削減を実現している。
実試験による気密性能の確認(C値 0.6 cm2/m2)、高効率な全熱交換器や昼光利用を想定した多灯分散方式の照明制御の採用等、快適性や省エネの実現に求められる要素技術がくまなく計画されていることに加え、制振装置による安全性の確保や、雨水、再生可能な建材、リサイクル材の利用といった資源循環に対する配慮等、前述した周辺環境との調和や省エネ性も含め、持続可能性を考える上で求められる配慮がバランス良く組み込まれた設計となっている。
住まい手が建物特性を理解し省エネに配慮した環境行動に基づいた住まい方を実践することで、竣工後1年間のエネルギー使用量は設計値から更に低減している。質の高い住宅を供給し、住まい手の理解と工夫により適切な性能を発揮するといった、サステナブル住宅の普及において模範となる住宅仕様と暮らし方を印象に残す応募作品であった。